物流の最新情報をお届け

19
海上コンテナ輸送の安全を支えるシールとは?

国際物流の要として欠かすことの出来ない海上コンテナですが、輸送時には積載された貨物を守るためにシール(封印)が行われます。今回は理屈では分かっていても、なかなか現物を目にすることは出来ないシールについてご紹介させていただきます。

海上コンテナに取り付けられるシールとは?

現在の海上コンテナの原型と言えるモノが登場したのは1950年代のアメリカ。規格化された鉄製の容器を用いることで、従来は時間を要し天候にも左右されていた荷役作業を、効率的に且つ安全に行うことが出来るようになりました。また海上輸送のみならず、トラックや鉄道も用いたシームレスな輸送は、物流の輸送や効率を飛躍的に向上させ、グローバルな貿易を大幅に促進しました。

ドアのハンドル部に取り付けられたボルトシール

海上コンテナの扉部分に取り付けられるシール(封印)は、貨物が出発地から目的地まで無事に届くことを保証するための、海上コンテナ輸送には欠かせない、重要な役割を果たしています。一旦シールを取り付けてしまうと、切断しない限りは扉を開けることが出来ず、輸送中の貨物の安全が担保される仕組みとなっています。

 

シールはその海上コンテナが積載される船の運行会社が支給します。通常は空コンテナを船会社指定のヤードに行った際に受け取ります。シールには船会社の名称やロゴ、シールナンバーと呼ばれる個別の番号が記載されています。

 

シールが示す安全性

コンテナをヤードから搬出入する際にはEIR(Equipment Interchange Receipt)と呼ばれる、受渡証が発行されます。コンテナの外観や内部にダメージが無いか?といった状況確認と共に、コンテナナンバーの他、シールナンバーも記載されています。出発地・到着地で記された両方の番号が一致することで、輸送途中に開扉されていないことの証明、つまり出発地でシールを取り付けた以降は、誰も積載された内部の貨物には触れていないという安全性が証明されます。

ヤードへの搬出入時や到着地に於いて記載された番号と異なるシールが付いていた、または切断されていた、ということは、輸送途中に第三者が何らかの理由で開扉したということになります。

開扉したケースとして考えられる理由として2つの理由が考えられます。1つは積み地・仕向け地の税関から現物検査を求められるケースです。実際に担当官が貨物に触れて検査が行われるため、シールを切断して開扉されます。もう1つは、船積前に何らかの理由で、改めて積載作業が行われるケースになります。コンテナに積まれた貨物の重心が偏っていると安全な荷役作業が行えないため、ヤード側から指摘を受け改めて積み付けを直すケースや、急遽貨物の一部を取り出して航空便での発送を行う必要が出てきたなどの理由が考えられます。一旦切断されたシールは廃棄され、別番号の新たなシールが取り付けられます。それに伴い、関係書類やシステム上の情報を訂正などが必要となり、貨物を取り出した場合には輸出申告の訂正を伴うなど、作業・時間を要することとなります。

これらは、合法的な開扉とも言えるケースで、関係各所へ情報共有が成されているのであれば、問題なくコンテナの輸送・取扱が出来ます。

しかし到着時側で異なった番号のシールが付けられていた、またシール自体が紛失していたということであれば、輸送途上で第三者が何らかの手段で開扉したことを意味し、海上コンテナ輸送が持つ安全性の担保が損なわれたということになります。荷主・受取人は勿論、輸送に関係する業者や機関への連絡が必要となるなど、大きなトラブルに発展する可能性があります。実際に海外ではシールが切断され、コンテナに積載された貨物の盗難事故などが発生しており、また機会を改めてご紹介したいと思います。

シールの現物を見てみよう

ハンドルが動かないように固定する

現在の国際海上輸送で用いられているシールは「ボルトシール」と呼ばれています。太さ10mm弱のボルト状になった金属棒で、表面はプラスティックで覆われています。その形状や色は運行する船会社によって様々ですが、船社名と個別のシールナンバーは、必ず表面に印刷されています。ボルトシールにはオス、メスがあり、一旦嵌めてしまえば、鍵穴などは無く、抜くことは出来ません。使い捨てのワンウェイのロックとなっています。シールを取り付けることにより、ハンドルを動かすことが出来ず、シールを切断しない限りは扉を開けることが出来なくなります。

コンテナの扉の開閉作業とシールの取り付け・取り外し

今回は実際の輸入コンテナの開扉作業、輸出コンテナの閉扉作業を、横浜・本牧埠頭のC-3上屋で観察してみました。C-3上屋は大型・重量品などの取扱を得意とする上屋で、日々多くのコンテナが搬出入されています。(同所で行われた特殊コンテナバンニング作業の紹介記事はこちら)

コンテナの扉は輸送中の事故防止のため、非常に頑丈な造りとなっています。扉は中央で分割されており、観音開きとなっています。扉の先端には重なる部分があるので、閉める時は左側を先に閉めて右側、そしてシールは必ず右側の扉のハンドル部分に取り付けられます。左側にシールと付けてしまうと、右側の扉はフリーとなり、開けることが出来てしまうからです。

海上コンテナの閉扉手順

①まず左側の扉を閉めます

②ハンドルを回して、ドアを固定します

③右側の扉を閉めます

④ハンドルを回してドアを固定、作業完了です

海上コンテナの扉には4本の棒(ロックロッド)とハンドルが付いています。ロックロッドの上下には爪が付いており、コンテナ妻部の上下に付けられた爪と噛み合うことで、扉が固定されます。閉扉作業の際には、これらの爪がきちんと噛み合っているかどうか、しっかりと確認します。完全に扉が閉められたことが確認出来れば、シールの取付を行います。右側のドアにあるハンドル部の穴にシールを通し、上下から押し込んで、封印が完了します。

しっかりと固定されているか、確認をする

ハンドル部にボルトシールを取り付ける

輸入コンテナの開扉作業の開扉作業を見てみましょう。作業は右側の扉に付けられたシールを切断することから始まります。切断にはシールカッターと呼ばれる大型の専用工具が用いられます。このカッターで一気に切断するのですが、かなりの力が必要となります。シールの切断後は右側のハンドル、ロッドを回して開扉、続いて左側を同じく開扉することで作業が完了します。

専用のシールカッターで切断する

切断されたシール

一連の作業を動画で撮影しましたので、こちらをご覧ください。



RELATED ARTICLES関連記事

  • お役立ち

    2022.05.06

    海上コンテナとは【20フィートコンテナ】
  • お役立ち

    2022.05.06

    海上コンテナ 【40フィートコンテナ】
  • お役立ち

    2023.06.30

    海上コンテナ【オープントップコンテナ】
  • お役立ち

    2023.03.15

    海上コンテナ【リーファーコンテナ】