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海上コンテナ【リーファーコンテナ】

お役立ち

2023.03.15

海上輸送ではドライコンテナをはじめとして、貨物の形状や性質、荷役の条件などから様々な種類のコンテナが運用されています。
港湾地区ではカラフルに彩られたコンテナの中でも目を引く白いコンテナ、リーファーコンテナをオリエント オーバーシーズ コンテナ ライン リミテッド 日本支社(OOCL)様の協力得て、同社の横浜港・本牧埠頭BCコンテナターミナルでの取材をもとにご紹介いたします。

リーファーコンテナを見てみよう

リーファーコンテナの外観

リーファーコンテナは外部から電源供給を受け、コンテナ端面に装備された機器により、0.1℃刻みで温度管理が可能なコンテナを指します。

通常のドライコンテナでは内部の温度管理はできないため、真夏の洋上を航海中の本船デッキ上では60℃以上の温度に達するケースもあります。その外観は太陽光の輻射熱を避ける目的で、白系統で塗装されているのが一般的です。

それではリーファーの各部を見てみましょう。
当日用意していただいたのは20fのリーファーコンテナとなります。

リーファーの側面となります。通常のドライコンテナと比較して凹凸が少なく、白や明るい色に塗装されているので分かりませんが、ステンレス板が外装板として使われています。各所の標記は他コンテナと比べると少なく、数カ所に限られ、ごくシンプルな印象です。

左下にOOCL社のロゴ
右上にコンテナナンバーが表記されています   OOLU394510 0(最後の0はチェックディジット)
コンテナナンバー下には、ISO6346で規定された構造区分コードが表記されています。22R1は  「高さ2,591mm、グースネックトンネルなし、リーファーコンテナ機械式冷凍加温両用型」を意味しています。

妻面に目を移してみましょう。
こちらには重量を中心と表記やCSCプレートが付いていました。

OOCL社のロゴ
コンテナナンバー
MAX GROSS/総重量  30,480KGS
TARE/自重          2,960KGS
NET/最大積載重量   27,520KGS
CUBIC CAP. /総容量          28.8M3
USABLE CAP./使用可能容量  27.4M3

 

 

 

 

ここで気になるのがTARE/自重です。20FのドライコンテナのTARE/自重は2,280KGS。それと比較して700kgs弱重い計算となります。これは後述するコンテナの構造や冷却・加温ユニットが装備されていることが要因となります。またUSABLE CAP./使用可能容量という表記もリーファーコンテナならではの表記となります。

妻面の右下にはCSCプレートが取り付けられています。ステンレス板に各種情報が彫り込まれ、国際条約に基づいて製造されたコンテナであることが記されています。よく見てみると2013年5月に中国CIMC社で生産された旨、またコンテナナンバーや製造番号、安全証明等を確認することができます。

 

リーファーコンテナの内側

リーファーコンテナの内側は、断熱性や気密性を保つためにドライコンテナと各所の造りが異なっています。
大きな開口部となるドアの周囲も2重のゴムパッキンが張り巡らされ、外気の侵入を阻む構造となっています。扉を閉めてしまうと、携帯電話の電波も届きにくくなるほどの気密性があります。

内部壁面はステンレス板が貼られており、外板との間には発泡ウレタンが注入された3層の構造で断熱性を保ちます。
そのため、ドライコンテナの壁面より厚く、内寸が小さくなります。ドライコンテナとのサイズの比較をしたものが以下の表になります。

■内寸の比較

(単位 mm)
コンテナの種類 長さ 高さ
20f ドライコンテナ 5,898 2,352 2,391
20f リーファーコンテナ 5,450 2,300 2,270
ドライとリーファーの差 448 52 121

数値からも分かる通り、ドライコンテナと比較するとリーファーコンテナの内寸は小さくなっています。
特に長さ方向については冷却・加温ユニットが装備されている関係上、約450mm弱短くなります。また高さについても天井面にも壁面と同様の断熱構造が施され、また床面の構造の違いがあることから、このような差が生じます。

ドライコンテナでは合板を貼ってある床板も、リーファーコンテナでは大きく異なります。
写真の通り、Tレールという断面がTの字になった金属材が約50mm間隔で敷き詰められており、このレールの隙間を冷風が吹き抜け、冷却・加温ユニットで温度コントロールされた空気が、コンテナ内を循環させる構造となります。

コンテナの最奥部には冷却・加温ユニットに繋がる吸い込み口が天井近くに、床面のレールの位置に吹き出し口が付いています。冷却・加温された空気は下から吹き出してTレールの隙間を通じて循環させます。コンテナ扉にぶつかった空気は天井近くに上昇し、吸い込み口に回収されます。冷却・加温ユニットに戻った空気は再び指定温度に設定された後に、吹き出し口からコンテナ内部へ再び流れます。

内壁上方に赤線が引かれているのが見受けられます。これはこの高さ以上に貨物を積んだ場合は空気の循環を阻害するため、この高さ以上に荷物を積まないことを注意喚起したものです。万が一阻害されれば航海中の輸送品質が大きく変わってしまい、最悪の場合、貨物にダメージを与える結果にも繋がらないとも言い切れません。

この他、貨物の積み付け(バンニング)も空気の循環を念頭に入れて行う必要があるため、ノウハウや注意が必要となります。

食品輸送に多く用いられるリーファーコンテナの特性上、衛生環境には非常に気をつかう部分です。匂いや汚れが発見された際には、即洗浄などの措置が取られますが、匂いがなかなか取れないという現状もあるそうです。そういった際にはオゾン脱臭機を用いた対応を行いますが、それでも完全に除去することは難しく、そのようなコンテナは食品輸送以外の運用に充当されます。

リーファーコンテナの心臓部 "冷却・加温ユニット"

リーファーコンテナには、その心臓部とも言える冷却・加温ユニットが取りつけられています。外部から供給される三相400Vで駆動され、通常-30℃から+30℃の範囲で0.1℃刻みで温度設定が可能です。その設定範囲はコンテナやユニットにより異なり、取材時に用意されたリーファーコンテナでは-35℃まで可能でした。また冷凍マグロの輸送に用いられるため、-60℃設定が可能なリーファーコンテナも一部存在するそうです。

取材の際に拝見させていただいたリーファーの一部冷却・加温ユニットを製造しているメーカーは複数存在し、OOCL様では3社のリーファーコンテナを取り扱っているそうです。冷却・加、温する目的は一緒でも、そのデザインや取扱いはメーカーによる多少の差異があります。

冷却・加温ユニットデザインの違い(一例になります)

海上・陸上問わず輸送中にユニットが故障してしまうと貨物が損傷してしまうので、PTI(Pre Trip Inspection)とよばれる検査がコンテナヤードからの搬出前に行われます。電源を接続して規定通りに動作するか?各所の電流値が規定通りになっているか?等、多角的に診断が行われます。故障が多く見られるのが、常に動いている各所のモーターや、輸送中の振動によりパイプにヒビが入ったことによる冷媒(ガス)漏れで、不具合があれば前者であれば交換、後者であれば溶接で補修を行い、再検査を行った上で運用に入ります。

装置を開け電流値の確認する様子。PTIが完了するとニコちゃんマークがでるリーファーコンテナも。

コンテナヤード内ではリーファー置き場内に専用電源が設置され、ユニットから延びるケーブルを接続して駆動させます。貨物の性質に因っては事前に予冷(プレクール)を行う必要があり、予めブッキング時に指定された温度に調整されます。通常搬出の2日前にはこうした作業が行われるそうです。取材時には外気温10℃でしたが、-10℃設定まで冷却するのには3~4時間程度かかり、気温の上がる夏場であれば、更に2~3時間を要することもあります。

専用電源に接続されたリーファーコンテナと電源部分(拡大)

コンテナヤードや冷蔵倉庫などの陸上施設、また海上輸送の本船上ではこのような専用電源が設けられて接続されますが、陸上輸送のトレーラーであればMGシャーシと呼ばれる発電機付きのシャーシから、鉄道輸送であれば専用の発電機をコンテナに取りつけて輸送されます。

 

密閉されているのに外気を入れる?

メーカーにより様々なデザインのベンチレーター

リーファーコンテナは輸送中、密閉された空間で温度を一定に保ちますが、実はすべてのリーファ―コンテナに外気を取り入れることができる通風孔「ベンチレーター」が付いています。
ユニットのメーカーによりベンチレーターの形状は異なっていますが、蓋の開閉率を変えることで外気導入の比率をコントロールします。一般的に冷凍帯の品物で用いられることはありませんが、玉ねぎなどの野菜類や昨今各地で人気となり輸出機会が増えている盆栽など、呼吸が必要な品物に用いられます。ベンチレーターの開閉率もブッキング時に指示を行うことで、コンテナ利用時に希望した開閉率に設定されます。

ベンチレーター開閉部を切り込みにかけて開閉率を調整するタイプのリーファーコンテナ

 

リーファーをドライコンテナとして運用 ~Refer as Dry~

食品自給率の低下が叫ばれて久しいですが、日本の場合は外地から流入してくるリーファーコンテナが多く、逆に出ていくものが少ないというアンバランスな状態が存在しています。これではリーファーの在庫が偏ってしまい、必要とする発地側に返却する必要が出てきます。

そのため加温・冷却ユニットを作動させずに、通常のドライコンテナとして用いられる
ことがあります。こうした運用をReefer as Dry(リーファー アズ ドライ)と呼びます。あくまでも船会社のコンテナの受給バランスで生まれる状況ですので、どの船会社・航路・タイミングでも受付をしているということではございません。

またドライコンテナと同じ使い方といっても、前述の通り、リーファーコンテナの内部構造は大きく異なります。
特にコンテナ内での貨物の固定、ドライコンテナであれば床面に釘打ちをしたり、壁面の凹凸に角材を嵌め込むようなことを行っていますが。リーファーコンテナではそのような手法を取ることができず、バンニングやラッシングには工夫が必要になります。こちらも前述の通り、リーファーコンテナの内寸はドライコンテナより小さいため、通常の感覚で梱包を仕上げてしまうと収まらないといったこともおきますので、実務手配を行う上では注意が必要です。

ドライは床が木材。天井床面に複数あるU字フックは貨物の固定を補助する役割がある(参考:20fコンテナ

品物の形状や性質に合わせて、様々なコンテナが用意されている海上コンテナ。
その中でもリーファーコンテナはその運用や取扱いが特殊ではありますが、普段は目にすることのない部分で各種食料品の輸送を担う等、普段の生活を送るには欠かせない部分に密着している輸送容器といえます。

昨今のワクチン輸送でも注目された医薬品や化粧品、温度管理が必要となる化学品や危険品類、意外なところでは美術品の輸送にも、厳密に温度管理がなされたリーファーコンテナが求められるケースがございます。港湾のコンテナヤードには各社カラフルなコンテナが並んでいますが、その中でも一際目立つリーファーコンテナ。そのユニークな運用をご理解いただければ幸いです。

(取材協力:オリエント オーバーシーズ コンテナ ライン リミテッド 日本支社(OOCL)様)

 

なお、日新ではOOCL様のリーファーコンテナをはじめ、様々な海上コンテナを利用した輸送のご手配が可能です。海上輸送のお引き合いや、お困りごとなどございましたらお気軽にご連絡ください。

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