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トランプ大統領の関税政策 アメリカの最新情報 Part 2 

2月12日に配信いたしました「アメリカ関税政策 2月1日から現在までの最新情報をお届け!」ですが、広く報道されている通り、多くの国々と様々な事案に対する新たな政策が連日発表されております。今回は前回配信以降起きた出来事や推移をご紹介させていただきます。(2月12日配信 アメリカ関税政策の記事はこちらから)

前回配信(2月12日)から現在までのまとめ

前回の配信の2月12日までに発生した事案は、カナダ・メキシコに対する関税政策の発動は3月4日まで保留、中国に対しては2月4日に10%の追加関税が発動し、中国側も対抗措置として2月10日から一部物品への追加関税の発動という内容でした。当初はカナダ・メキシコ・中国を対象としたものでしたが、その後、検討・調査対象が一部の品物へ広がり、更なる課税政策の検討・推進を進めていることが分かります。その後の動きについて、時系列での動き纏めると、以下の通りとなります。

2月7日
・ワシントンで日米首脳会談が行われる。日本製鉄のUSスチール買収計画は「大きな投資」で合意。石破首相は、対米投資額を1兆ドルに引き上げると発表。関税政策については多く議論せずと報道される。

2月10日
・トランプ大統領が鉄鋼・アルミ製品の米国輸入に対し25%の追加関税を発表。現行適用されている各種除外制度を廃止し、3月12日に発効予定。

2月13日
・トランプ大統領が、相互関税の導入に向けて、全貿易相手国との貿易関係の調査を指示。近い将来、半導体や医薬品への新たな関税導入の可能性を検討も。

2月14日
・関税追加対象の鉄鋼・アルミ製品290品目の関税分類番号を発表される。鉄鋼167品目、アルミ123品目が新たに追加対象に指定される。
・トランプ米大統領が、新たに自動車への関税を導入することを表明、適用範囲などは不明だが、4月2日頃に詳細が発表される見込み。

日本に大きな影響を与える関税の行方は?

2月18日
・トランプ大統領は、14日に表明した自動車への関税の導入について、税率が25%前後となること、また米国内に工場を移転するための時間的猶予を与えると説明。

2月21日
・米国通商代表部(USTR)が、通商法301条に基づき、中国で建造された船舶の米国入港時の追加料金や米国製品輸出時の船舶利用条件を示す。

2月25日
・トランプ大統領が通商拡大法232条に基づき、銅の輸入が米国の安全保障に与える影響を調査するよう商務長官に指示。

2月26日
・トランプ大統領は、欧州連合(EU)からの全輸入品について、追加で25%の関税を検討していると発言。

3月1日
・トランプ米大統領、木材・製材品への通商拡大法232条に基づく調査を商務長官に指示。

3月2日
・輸入申告額が800ドル以下の少額貨物の輸入に適用しているデミニミス・ルールの適用停止を、徴収システムが整うまで留保する大統領令を発表。

3月3日
・トランプ大統領が中国からの輸入品に対し、新たに10%の追加関税の導入を指示する大統領令を発表。既存分と合わせて、20%の課税となる見込み。
・約1か月間留保していたカナダ・メキシコ産品に対する25%の課税を、翌3月4日からスタートする旨を発表。
・トランプ大統領、「日本と中国は通貨安に誘導、解決には関税が必要」と発言。
・米商務省が鉄鋼・アルミへの追加関税に関する官報案・適用日を公開。

3月4日
・米国東部時間午前0時1分より、カナダ・メキシコに対する25%追加関税を発動。

二転三転し、相互に対抗措置が発表される

・メキシコ、シェインバウム大統領が関税を含む報復措置を3月9日に公表すると発表。
・カナダ、トルドー首相がアメリカからの輸入品に対して段階的に関税を課す方針を発表。
・中国が対抗措置として、綿・トウモロコシ・農畜産物などの740品目に対して、10~15%の追加関税を3月10日から課すことを発表。
・(参考)ホンダ シビックの次世代モデルの生産拠点をメキシコからアメリカ・インディアナに移すことを発表。

3月5日
・アメリカ・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に準拠してアメリカに輸入される自動車について、4月2日まで関税発動を延期すると発表。

3月6日
・カナダ・メキシコに対して発動された25%の関税を、アメリカ・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に準拠した輸入品について、4月2日まで関税発動を延期すると発表。
・カナダが3月4日に発表した追加関税のうち、第二弾の発動を4月2日まで延期することを発表。

3月8日
・米国税関・国境警備局(CBP)が関税に関する公式声明を発表。(CBPのホームページにリンクします)

3月10日
・中国が3月4日に発表していた、報復関税の第二弾を発動する。農水産物を中心に、最大15%。

連日、目まぐるしく発言や発表が続き、内容が変わることも多いのですが、執筆時点(3月11日)で国別 ・品物毎に発表されていることを纏めると、以下の表の通りとなります。

 

米国税関・国境警備局(CBP)より、各種ガイダンスも発表されております。以下のリンクよりご参照ください。

カナダ製品USMCAに関するガイダンス
メキシコ製品USMCAに関するガイダンス
鉄鋼製品に関してのガイダンス
アルミ製品に関してのガイダンス

 

米国港湾の入港料に関する懸念

次々に発表となる関税政策とその行方が気になる部分ではあるのですが、2月21日に発表された、米国通商代表部(USTR)が中国で建造された船舶に対する入港料の課徴提案は、物流業者として見過ごすことの出来ない情報です。

米国に寄港すると高額な入港料が発生する!?(ロサンゼルス港)

米国通商代表部(USTR)は21日、中国建造船などに対して米国港湾入港時に最大150万ドルの入港料を課徴する提案を行ったと報道されています。同措置が導入された場合、海上コンテナ輸送においてもコスト増の懸念が取り出されております。一方、米国籍船の米国港湾への寄港を優遇する方針や米国製品の輸送の一部について米国船社が運航する米国籍船の利用を義務付ける方針を示しているとのことです。USTRが21日に公表した提案によると、各運行船社に対する詳細は下記のとおりです。

【中国の運航船社】
外航サービスで米国港湾に寄港する場合、1寄港当たり最大100万ドル、寄港船舶の1純トン当たり1000ドルの料金を課す。

【中国船社以外の船会社】
中国建造船の米国港湾への入港に対して最大150万ドルの料金を課す。船隊の50%以上が中国建造船となる運航者に対しては、米国港湾の入港1隻につき最大100万ドル、25%から50%未満の場合は最大75万ドル、0%から25%未満の場合は最大50万ドルを課す。

今後24カ月以内に中国造船所から引き渡される予定の船舶を持つ運航者の場合も、1寄港当たり最大100万ドルの料金を課す。

あくまでも現時点では提案段階であり、3月上旬までの期間でパブリックコメントの受付、その後3月下旬に公聴会が予定されております。それらを経て最終的にどのような内容となるのか?決定される予定です。

現状、中国の造船会社で建造された貨物船は半数以上に及び、他国の造船会社に発注した本船でも、実際には中国の造船会社で建造されたケースも少なくないと聞きます。他方、米国籍船は隻数が限られており、今後建造するとしても、就航するまでには相応の時間を要します。船社アライアンスによる共同運行やスロット交換という相互でスペースを確保しているのが現状を考えると、その影響は広範囲に及び、コストアップに直結する可能性がございます。トランプ大統領の「ディール」の可能性もありますが、今後どのような決定が成されるのか、注視が必要となります。

カナダ・アメリカ・中国に対しては、当初の話の通りの関税が導入されました。今後、日本に関連した分野での導入も予想され、まだまだ大きな影響が及ぶ可能性が大きいと思われます。関税導入の動きがごく短期間で進む中、既に構築されているサプライチェーンの体制を容易に変更することは難しく、関税導入は避けられないものとして、少しでも軽減に繋がるシフト・体制に出来る範囲内で変更することが当面の対応策といった声も聞かれます。また中国側ではCIF建てが基本だったものが、追加関税により、DAP・ DDPへの変更を顧客同士で話し合うことも見受けられるそうです。

弊社米国法人・NITでも追加関税に対応した情報の入手や申告を既にスタートしており、日々発表される情報を追いかけて、最新情報の把握に努めております。本Navigationでも、今後も米国側と連携して、最新の動きをお届けする予定です。

本記事執筆に際して、各政府機関・各報道機関の情報を参考にしています。

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