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ULD ~世界の物流を支える航空機用コンテナ~

空港を訪れた際に、コンテナやパレットが積載されたドーリーが何台も連結され、トラクターに引っ張られている光景を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。これらのコンテナやパレットは、航空輸送の現場で「ULD(ユニット・ロード・デバイス)」と呼ばれ、重要な役割を果たしています。

 

ULDは、貨物や荷物を効率的かつ安全に輸送するために特別に設計されたコンテナやパレットのことです。これにより、航空会社は荷物の取り扱いを迅速に行い、航空機のスペースを最大限に活用し、効率的な運用には欠かせないものとなっています。

 

今回は株式会社JALカーゴサービス様にご協力いただき、ULDについてご紹介いたします。

ULDとは?

ULD(ユニット・ロード・デバイス)は、国際航空運送協会(IATA)で規格化された、航空機積載用の輸送機器です。航空輸送が普及し始めた初期の頃、貨物を個別に積載することは時間と労力を要し、遅延や損傷、また安全面でのリスクが高まりました。この問題に対処するために、1960年代にULDが導入されました。ULDを用いることで、航空機内の限られたスペースを効率的に運用し、安全に飛行するとともに、発着地での荷役作業を短時間で行うことが可能となりました。これにより、貨物の取り扱い時間が大幅に短縮され、航空機の運行効率が向上しました。また、ULDは貨物の損傷を防ぎ、輸送中の安全性を確保する役割も果たします。さらに、ULDの使用は輸送コストの削減にも繋がり、航空輸送業界が大きく発展する要因の一つとなりました。これにより、国際的な物流ネットワークの構築が進み、グローバルな経済活動を支える重要なインフラとなっています。

積載する航空機の種類とは?

セミワイドボディのBoeing767-346(ER)

世界中でさまざまな航空機が運用されていますが、現在はボーイング社、またはエアバス社の機体を中心に運用されています。旅客機や貨物専用機、また機体のサイズによって、積載できる貨物の個数はもちろん、機体の断面形状が異なるため、ULDの種類によっても積載の可否が出てきます。

航空機は、そのサイズ・断面形状によって、主に以下の2つの種類に分類されます。

1.ナローボディ(機内の通路が1本の機種)
例:B737、B757  A318、A319、A320、A321
特徴:搭載できる貨物量に制限があり、コンテナが搭載できる機材と、コンテナが搭載できずバルク室(バラ積み)のみとなる機材があります。

2.ワイドボディ(機内の通路が2本の機種)
例:B747、B767*、B777、B787 A330、A340、A380
特徴:比較的、大容量の貨物を搭載可能です。
*B767は若干幅が狭いため、セミワイドボディとも呼ばれます。

2つに大別されるULD

ULDは、コンテナ型とパレット型の2つに大別されます。それぞれの特徴と運用方法について詳しく見ていきましょう。

コンテナ型ULD

ローワーデッキ積載・コンテナタイプのULDの一例

コンテナ型ULDは、航空機の貨物室の形状に適合するように設計された、箱型の構造を持っています。軽量で耐久性に優れたアルミニウムや複合素材で作られており、航空機の胴体の断面に合わせて、角を落とした形状となっています。貨物を保護するための扉やカバーを備えており、内部の荷物をしっかりと固定できます。
貨物の形状や性質に合わせた様々なタイプがありますが、旅客機・貨物専用機の機体下部に積載可能なLD(Lower Deck)と呼ばれるタイプと、貨物専用機に用いられるMD(Main Deck)と呼ばれる2つのタイプに大別されます。また航空機の機種により、ナローボディ(通路が1本の機種)、ワイドボディ(通路が2本の機種)があり、貨物室内のサイズが異なるため、積載出来るULDの個数はもちろんのこと、サイズや形状も異なってきます。

旅客機(ワイドボディ)へのULDの積載例 貨物専用機へのULDの積載例

ドーリーに積載されたパレット型ULDの一例

パレット型ULD
パレット型ULDは平らな板状で、大型の貨物や不規則な形状の貨物を輸送する際に用いられます。アルミニウムのフレームで構成され、貨物を固定するためのネットやストラップが掛けられるような金具が各部に付いています。水濡れや盗難を防止するために、貨物積載時にはシートが掛けられることが一般的です。

これらのULD自体に車輪が付いているわけではなく、地上で用いられるドーリーやローダー、航空機内の床面にローラーが各所に埋め込まれており、その上を転がって移動しています。空港で積載している光景を見ると、大きなULDを人が押す事で移動させていますが、ローラーの効果で僅かな力でも移動することが可能です。また床面各部にはULDを固定するためのストッパーも設置されています。

空中を高速で移動する航空機の性質上、ULDには高い安全性が求められます。飛行中の揺れや火災発生、また荷崩れなどで貨物が飛び出してしまわないように、その製造から運用、保守に至るまで、IATAが制定したULDRと呼ばれるレギュレーションによって細かく規定されています。

ULDには、識別のために個別の番号が外観に標記されています。最初のアルファベット3文字はULDの種類を示し、その後ろに続く5桁の数字は個別の番号、最後のアルファベット2文字はULDを所有する航空会社のコードになります。

実際のULDを見てみよう

今回取材させて頂いたのは成田空港内にある株式会社JALカーゴサービス様の貨物上屋内。日々多くの貨物が行き交う、空と陸の重要拠点です。上屋内には多くのULDが並べられており、代表的なULDから特殊なものまでを見せていただきました。

コンテナ型ULD
AKE
ローワーデッキに積載される一般的なULDとして、広く用いられています。旅客機の場合は、乗客の手荷物の輸送にも用いられています。航空機内の断面形状に合わせて、片側の角が斜め切り取られており、機内へ積載される際は向かい合わせとなり収納されます。1.1m角のパレットを一つ積載できます。

LD3(AKE)の外観 側面のドアは一か所、上に持ち上げて開ける 側面の開口部は一面のみ 
最大長:190cm 開口部:147cm 幅:139cm 高さ:157cm 容積:3.9~4.4m3 最大積載重量:1,587kgs(自重込)

*数値は弊社調べによるものです。各寸法は内寸になります。
*搭載機種、運行ルートにより、搭載重量が異なります。

RKN
AKEと同型の外観を持つ保冷ULDで、マイナス20℃~プラス20℃の温度帯で設定可能。コンテナ端面の扉からドライアイスを入れ、内部を冷却。乾電池で稼働する冷却ファンで冷気を循環させる構造です。ドライアイスは最大180kgsまで積載可能で、最大で72時間の保冷性能があります。内部には110×110のパレットが一つ積むことが可能ですが、冷気を循環させるため、赤いラインの所までと制約されます。

妻面の正方形の扉からドライアイスを入れる 冷気循環のため、貨物は赤い線まで制限 温度調節のコントロールパネル、
下は乾電池ホルダー
最大長:180cm 開口部:124cm 幅:124cm 高さ:132cm 容積:3.0m3 最大積載重量:1,587kgs(自重込)

*数値は弊社調べによるものです。各寸法は内寸になります。
*搭載機種、運行ルートにより、搭載重量が異なります。

RKNと同様の保冷ULDですが、コロナ禍以降で注目を浴びる医薬品輸送専用のULDも見学させていただきました。「CC5」と呼ばれ、 プラス2℃~8℃の温度帯に特化しており、真空断熱された内部に蓄冷材カセットを24枚収納。最大で140時間程度の長時間定温維持が可能です。この他、20℃を維持する蓄冷材カセットも用意されています。

CC5の外観 庫内には隙間なく蓄熱カセットが並ぶ 庫内上部にも蓄熱カセットを入れる

RAP
前述の保冷ULD、RKNの大型版で、容積で約3倍の積載が可能です。保冷構造も同様で、マイナス20℃からプラス20℃の温度帯で設定可能、ドライアイスで冷気を発生させ、内部のファンで循環させる構造です。容積が大きい分、ドライアイスの積載は300kgsまで可能となっています。

RAPの外観 内部最奥部の冷風口 RKNと同様の内部構造
最大長:294cm 幅:195cm 高さ:139cm 容積:8.2m3 最大積載重量:5,102kgs(自重込)

*数値は弊社調べによるものです。各寸法は内寸になります。
*搭載機種、運行ルートにより、搭載重量が異なります。

貨物が積載され、シート・ネットが掛けられたパレット

パレット型ULD
物流の現場で用いられているパレットとは異なり、アルミニウムの構造体で作られた、板状のULDを指します。コンテナ型のULDに積載出来ない、背高物や長尺物、大型・重量品の輸送に用いられており、ベルト・ストラップなどで貨物を固定、シートやネットで覆います。背高の貨物となると、航空機内のLD(ローワーデッキ)に積むことが出来ず、必然的にMD(メインデッキ)や専用機などの貨物便での輸送となります。そのため、毎日フライトがある航路でも積載可能な貨物便は限られるため、積載までに時間を要してしまうケースもあります。

一般的に運用されているパレットは2種類あり、長さは双方とも同じ125インチ / 317cmですが、幅が異なり、88サイズ(88インチ/223cm)と、96サイズ(幅:96インチ/243cm)と呼ばれ、ワイドボディの航空機に積載されます。

パレット外観 木パレを載せる 木パレ6枚を積載した状態
PAG(88) 長さ:317cm 幅:223cm 最大高:162cm 自重108~134kgs 最大積載重量:5,102kgs(自重込)
PMC/PMZ(96) 長さ:317cm 幅:243cm 最大高:162cm 自重132~140kgs 最大積載重量:5,102kgs(自重込)

*数値は弊社調べによるものです。
*搭載機種、運行ルートにより、搭載重量が異なります。

この他、大型の特殊パレットとして、20フィートパレットを用意していただきました。長尺や大型・重量品を輸送するためのパレットで、幅:96インチ/243cm X 長さ238 1/2インチ/ 605cmと、通常の倍の長さがあります。最大積載量は10tで、長尺物や船舶や航空機のエンジンなど重量品やロケット部品などの大型物、自動車の輸送などに用いられています。

PGA 長さ:607cm 幅:243cm 最大高:243cm 自重483~734kgs 最大積載重量:11,340kgs(自重込)

*数値は弊社調べによるものです。
*搭載機種、運行ルートにより、搭載重量が異なります。

また日本航空株式会社様オリジナルの機材として、「J-WHEEL」と命名された自動車輸送専用に開発された特殊なパレットを見せていただきました。タイヤの幅に合わせたガイドウェイが設置されているほか、各部に固定用の金具類が取り付けられる構造となっており、通常パレットでは発生する可能性の高い固縛によるダメージの軽減が期待出来ます。このほか、高さの制約はあるものの、機体に対して縦向きに積載することも可能となり、全長5m程度の自動車でも旅客便への積載が可能となるメリットもあるそうです。(通常、旅客便への積載は横向きとなるため、長さが3.5m程度に制約され、大型車両の場合は貨物専用機での輸送が求められています。)

Jホイールの全景 パレット上にはタイヤが通る溝を設置 前後には手すりの取り付けが可能
J-WHEEL 最大長:514cm 最大車輪外幅:188cm 最小車輪内幅:122.3cm  最大高:149cm 最大積載重量:1,953kgs

海上コンテナが荷役の効率化や航海時の安全性を向上させ、物流を大きく変革させたのと同様に、ULDはよりコストや効率にシビアな航空輸送のニーズから生まれた発明品と言えると思います。その特殊な形状や構造には各々理由があり、実物を見てみると、なるほど!と思える部分が沢山ありました。空港での待ち時間、目の前を行き交うさまざまな形状のULDを観察してみると、その用途や積載位置など、いろいろ推測出来て面白いかもしれません。

(上屋取材協力:株式会社JALカーゴサービス様 )

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