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海洋冒険家 堀江謙一さんのヨット輸送

海洋冒険家の堀江謙一さん(以下、堀江さん)の世界最高齢での単独無寄港太平洋横断挑戦(米国サンフランシスコ~兵庫県西宮市)で使用されたヨット(サントリーマーメイドⅢ号)の輸送を手掛けた日新。

輸送を担当した大阪営業第2部の青木課長(以下、青木さん)へのインタビューをもとに、世界に1艇しかないヨットの輸送についてご紹介いたします。

はじめに…

堀江さんは、世界最高齢での単独無寄港太平洋横断に挑戦され、「サントリーマーメイドⅢ号」で2022年3月26日、ザ・サンフランシスコヨットクラブ(サンフランシスコ)より出航し、2022年6月4日に新西宮ヨットハーバー(西宮市)に到着されました。

日新では堀江さんより1通のお手紙をいただいたのきっかけに、新西宮ヨットハーバーからのヨットの引き取りから、出発地であるザ・サンフランシスコヨットクラブまでの輸送を日新グループ一体となって輸送を行いました。

道路交通法にも注意!日本からの輸出

ヨットの引取り

2022年1月24日、新西宮ヨットハーバーにあったサントリーマーメイドⅢ号(全長6m、高さ3.15m、重さ1.5t)を低床トレーラーにて引取りを実施し、神戸港に搬入しました。

当該ヨットは、錘(オモリ)がついているため架台を一緒に運び、当社阪神支店L-13にて40フィートフラットラックコンテナにバンニングを行い、また道路交通法上における高さの問題を想定し、今回は低床トレーラーの起用に至りました。また、今回はヨットの高さがあったため、40フィートコンテナ2本分のスペースを抑えての対応となりました。

低床トレーラーを用いて慎重にヨットを輸送

海上混雑を想定して輸出スケジュールを調整

通常であれば、神戸港からロングビーチ港(米国)間は3週間程度で到着しますが、今回は新型コロナウィルスの影響を鑑み、輸送期間を約1カ月半と予想して手配を行いました。

フラットラックコンテナへヨットを固定

神戸港での貨物搬入にも余裕を持ったスケジュールを組んでいましたが、安全航行上、貨物が動かないようにするよう指示する船会社と、ヨットを壊さないようある程度遊びを持たせてコンテナに積み付けを行いたい荷主との調整に時間を要し、ヤードからラッシングが甘いと一度は荷受拒否もありましたが、現場で何度かやり直しを行い、最終的には了解を得て貨物搬入締切日に無事搬入できました。

貨物を固定するラッシングを手配する上で、当該ヨットの設計者に話を伺って対応策を練り、通常以上に傷をつけないよう気を配り、ヨットの引き取りから神戸港出港まで青木さんを中心に当社社員が必ず付き添う形での搬入となりました。

米国に到着後すぐ航海となるため、通関についてはATAカルネを利用し通関業務を簡便化する方法での輸出申告を行いました。

グローバルネットワークで現地の輸入業務

ヨットの搬入先ハーバーを調整

堀江さん出発の地である米国では、当社グループであるNISSIN INTERNATIONAL TRANSPORT U.S.A., INC. (以下、NIT)にて取扱いを行いました。

NITの役割としては、ヨットの輸入通関、ロングビーチ港から40フィートフラットラックコンテナの搬出、サンフランシスコの指定場所であるザ・サンフランシスコヨットクラブまでの輸送でした。輸送に際し、ロングビーチ港から荷下ろしするのに10日間要したものの、ロングビーチ港からザ・サンフランシスコヨットクラブまでの輸送は1日で終了することができました。

アメリカ側でのヨット輸送

ヨットの搬入先ハーバーの選定には骨を折られたと青木さんは語ります。
堀江さんは、サンフランシスコのハーバーでのマスト設置等の事前準備を出航前に行いたいと希望されていましたが、当初ハーバーサイドがそれを許可できないとしたため、NITと当社でハーバーへ直接交渉するもハーバーのルールに明るくないフォワーダーだけではうまくいきませんでした。
これらの問題を解決するためにお力添えをいただいたのが、堀江さんのヨット仲間たちです。現地事情にも明るい彼らの交渉により無事ヨットの搬入先等の諸問題をクリアすることができ、堀江さんの出発が可能になったのでした。

サンフランシスコ港で帆つけ作業をする堀江さん

堀江さんの帰港

日本輸入時の対応については、堀江さんの入国手続きに加え、ヨット自体の入港手続き、ヨットの積載物(食料や船用品)も含まれていたため、植物検疫所への届出等も当社通関部および阪神港運部で対応しました。

また、現在の新型コロナウィルス感染症の対応として、2カ月強の単独無寄港となる今回のケースでも、米国出国72時間前のPCR検査の陰性証明が必要となりました。当該PCR検査は、サンフランシスコ出発前に実施し、その手配や堀江さんやサポーターの米国行き航空券手配等は、当社グループ会社の日新航空サービスが対応するなどグループ一丸となりました。

新西宮ヨットハーバーに帰港するヨット

また今回のプロジェクトで最も苦労された点は、ヨットの輸入であったと青木さんは語ります。海上混雑はあるもののヨットは貨物としての輸出でしたが、輸入については堀江さんの単独航行という自然相手であったため、日本へ到着するタイミングを予想することは容易ではありません。堀江さんのヨットがゴール地点を超えたら終了というわけではなく、曳航して港までもっていくのに約10時間かかるため、事後作業を想定しての到着のタイミングを図るのに苦慮されたようです。

堀江さんの日本入国手続き等、管轄官庁への手続きは原則平日に行わなければなりませんが、海上で数カ月過ごされた後、諸手続きのために洋上で待たせるわけにはいかないと、青木さんは何度も管轄官庁と交渉を行いました。

その結果、ゴール翌日の日曜日に諸手続きを行うことができ、無事堀江さんの日本入国、そして当該ヨットや船用品の日本輸入が完了しました。

ヨットの輸出入を行った大阪営業第二部について

大阪営業第二部が入る大阪事務所

ここからは、今回の輸送を手掛けた青木さんが所属する大阪営業第二部について紹介します。同部は4つの課に分かれており、営業第一課では、設備機械の輸出入、家具輸入、自動車関連を取扱っています。また、神戸港ではL-8営業所で中古建機のヤードも運営しております。

営業第二課では木材輸入業務を主業務とし、東京の新木場にも営業所を構えています。営業第三課では化学品を中心に大阪南港で化学品センターも運営しております。国際課ではコンテナの手配や船社へのブッキング、スペース確保等を担当しています。昨今のコンテナ不足の中、今回の輸送で使用された40フィートフラットラックコンテナの確保や船社へのスペース手配等を国際課が全面的にバックアップしてくれたとのことでした。また、青木氏自身が、機械設備の取扱いに慣れており、フラットラックコンテナの引取りも多数経験していたことが、今回のヨット輸送プロジェクトに活かされたと語っていました。

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