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リチウムイオン電池の海上輸送時の注意点

身近な存在だからこそ、安心・安全にリチウムイオン電池の輸出を!

 

社会インフラの1つと数えられるスマートフォンやノートPCをはじめ、様々な電子機器に搭載されたリチウムイオン電池は、私たちの生活に欠かすことのできないアイテムです。多くの製品に搭載されることから海上輸送に関するお問合せをいただく機会も増えております。

 

数年ほど前になりますが、スマートフォン用バッテリー等の発熱や発火する事故が発生し、それを契機として各種法制度が見直された結果、受託規制が以前より厳しくなりました。

船社や仕向け地(経由地以降の規制含む)によって引き受け基準が異なるケースもあり、事前の確認が必須となりますので、リチウムイオン電池の海上輸送における積載確認に必要な情報について簡単にご案内させていただきます。

 

輸出の可否を3項目でチェック

リチウムイオン電池の海上輸送上の取扱いですが、その製品のスペックや条件により異なります。
日新ではまず以下3項目のご確認・ご提出をいただいた上で、船社への積載確認作業を行っております。

① 製品が新品であること  ダメージによるショートや保存劣化の可能性があるため中古品の受託不可としています。
② 製造メーカーの確認、製品情報 アメリカ連邦航空局をはじめ国交省にて一部製造メーカーの製品についての取扱いを禁止していることから、当社においても当該製品については取扱いが不可となるため、製造メーカーの確認および製品情報の確認を行います。
③ SDS(安全データシート) SDS(=Safty Data Sheet)と呼ばれる文書で、化管法(化学物質排出把握管理促進法)で指定された「化学物質またはそれを含有する製品」を他の事業者に譲渡または提供する際に、その化学品の特性および取扱いに関する情報を事前に提供するものです。
化学物質の危険有害性情報が記載されているため、危険品輸出の際には必ず必要となります。

 

特別規定要件を満たしていれば普通品扱い!?

通常、海上輸送の際は危険品として分類されるリチウムイオン電池ですが、国際海上危険物規定(IMDG-Code) 特別規定188(*)の要件を満たすことで、普通品として分類されるケースもございます。

当社では、普通品扱いとして出荷可能かどうかの判断を、下記3点の書類提出にて行っております。

・SP188の要件を満たす旨明記されたSDS
・SP188 の要件を満たす内容のテストレポート
・国連勧告輸送試験(UN38.3)クリアのテストレポート

■特別規定 SP188(*)

船舶による危険物の運送基準等を定める告示 別表第一備考10(2021年1月1日施行分)より原文転載

とはいえ…貨物の危険性は変わらず、年々船社の規制は厳しくなる一方です。 今後も各種規制の改定が発生することが予想されますので、この他項目に関しても確認をお願いすることがあるかと思います。
お手数をお掛けしますが、安全な貨物輸送にご協力いただけますよう、よろしくお願いいたします。

 

国連勧告輸送試験とは…

普通品扱いとして輸出する際に必要となる、国連勧告輸送試験のテストレポートについてもう少し細かく触れてみたいと思います。

国際連合の経済社会理事会に危険物の輸送に関する専門家委員会が設置されており、そこでは危険物の分類・定義・品目リスト・包装基準などについて勧告を出しています。

この「危険物の輸送に関する国連勧告の試験」(通称:オレンジブック)において、リチウムイオン電池は2003年に米国空港内で起こった火災事故などをきっかけにリチウムイオン電池(LiB)の輸送規則が制定されました。

リチウムイオン電池の試験方法と基準はこのマニュアルのセクション38.3に規定されており、リチウムイオン電池の国際輸送(船舶、航空および鉄道)においては、この試験に合格することが求められています。

■UN38.3におけるLiBの試験内容

T1 低圧 航空輸送時の低圧状態を想定
T2 温度 極端な温度変化を想定した試験
T3 振動 輸送振動を想定した振動
T4 衝撃 輸送時の衝撃を想定した試験
T5 外部短絡 外部短絡を想定した試験
T6 衝突/圧壊 重量物による衝突を想定した試験
T7 過充電 過充電状態の耐久力を評価
T8 過放電 過放電後の転極を想定した試験

 

SP188を満たしていてもやっぱり危険品扱いとなることも…

上記の条件を満たしていても、最終的に積載を判断するのは船会社です。船社の規定により危険品扱いとなってしまうことがあります。

そういった場合でもご安心を!

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経験豊かなスタッフがリチウムイオン電池輸送をサポートいたしますので、お気軽にお問合せ下さい。

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