アメリカの貨物列車とは?
アメリカの鉄道と聞いても、ピンとこない方が多いかもしれません。自動車が生活には欠かせない環境のため、通勤や通学で鉄道を利用する機会はほとんどなく、都市間移動においても、日本の新幹線のような高速鉄道網は東海岸の一部に限られます。地図を見ても、線路の記載が見当たらないことも多いです。
旅客輸送では、自動車や航空機が主役ですが、貨物輸送に関しては、アメリカ国内の貨物輸送量の15~20%程度を鉄道が担っています。一度に大量の貨物を長距離輸送できるという鉄道のメリットを最大限に生かしています。
主に石炭や石油、鉱物、農産物、化学品、自動車などが鉄道で輸送されています。「日本とはあまり関係がないのでは?」と思われるかもしれませんが、実際には日本や中国、アジア各地とも密接な関係がある物品も輸送されています。
それは海上コンテナです。
海上コンテナを運ぶ列車、DST(Double Stack Train)
日本やアジア各地から海上輸送で西海岸に到着した海上コンテナの多くは、内陸の工場や消費地に向けて鉄道で輸送されます。日本の港湾とは異なり、アメリカの主要港には線路が引き込まれているため、海上輸送と鉄道輸送の接続はスムーズに行える環境が整っています。
海上コンテナを運ぶ貨物列車は、専用の貨車で構成されたDST(Double Stack Train)と呼ばれます。海上コンテナを貨車に載せて運ぶ輸送は世界各国で行われていますが、コンテナを2段に積んで一度に運ぶ輸送形態は1970年代初頭に始まり、以来北米(アメリカ・カナダ・メキシコ)独自のものでした。近年では、インドでも見られるようになりました。元々、輸送単位が大きく、列車編成が100両以上、長さにして1マイル(約1.6km)にも及ぶ「マイル・トレイン」が古くから走行していましたが、DSTではコンテナを2段に積むことで、より効率的な輸送を実現しました。
MATEの問題とは?
北米大陸を網の目のように各地を結ぶDSTですが、20フィートコンテナを利用した際に、港湾で待たされてスケジュールが遅れてしまったという経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
DSTの貨車は20フィートコンテナから53フィートコンテナまで、さまざまなコンテナが積載できるように設計されています。しかし、20フィートの長さに対応したツイストロックは貨車の床面にしかなく、下段に2つ積むことが求められます。その際に相方(MATE)となる20フィートコンテナがあれば良いのですが、見つからない場合は次の列車まで待たなければならず、そのために遅延が生じてしまうことがあります。
最近の港湾混雑とは別の理由で遅延が生じる要因があることについて、お客様からの質問が多く寄せられるのでこちらで触れさせていただきました。
DSTを観察してみよう
DSTは、西海岸の主要港湾から内陸や東海岸へ、またその逆のルートでアメリカ各地を結んでいます。カリフォルニア州ロサンゼルス・ロングビーチ港一帯は一大集積地であり、西岸とシカゴを結ぶBNSF、Union Pacificの2つの鉄道会社が乗り入れを行っています。従ってこの地域周辺の各路線ではDSTを頻繁に見ることができます。今回は、ロサンゼルスの北約100マイル(約160km)ほどに位置するへイプレスキャニオンにて、BNSF線を北に向かうDSTを観察してみました。行先についてはオークランドやシアトルといった、港湾都市を目指して運行されていたと推察されます。アメリカ国内で運用されている53フィートコンテナが積載されない国際輸送の海上コンテナ専用列車で、40フィートコンテナを主体に20フィートコンテナ、日本では殆ど運用されていない45フィートコンテナが積載されていました。今回ご紹介する長大な列車が、全米各地を結び、国際輸送の一端を担っています。
日本の鉄道貨物輸送とは、輸送形態や規模の異なるアメリカの鉄道貨物輸送。そのスケール感を実感すべく、一体貨車が何両連結されていて、幾つのコンテナが載っているのか??カウントしてみました。詳しくはこちらの動画をご覧ください!