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アメリカ関税政策 Part6 4月30日から現在までの最新情報をお届け!

5月に入り、アメリカの関税政策はさらに急展開。米中間の追加関税引き下げ合意、日米間の交渉進展など、重要な動きが相次ぎました。前回配信(4月30日)以降の出来事を整理して、分かり易くご紹介いたします。

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4月30日から現在までの動き

4月30日以降、国別に設定された追加関税に関する具体的な交渉が進む場面が多く見られます。日本も2回目の交渉に臨み、今後も継続して交渉が行われる予定です。それでは時系列でご紹介いたします。

4月30日
・トランプ大統領、追加関税累積停止と自動車部品関税の緩和を発表
トランプ大統領は、一部の追加関税累積を停止し、自動車部品への関税に相殺制度を設ける2つの行政命令を発表。これにより、特定品目の負担軽減が期待されるが、鉄鋼やアルミ製品など一部品目では累積が継続される。
*ホワイトハウスの発表にリンクします。

5月1日
・アメリカ、自動車部品関税ガイダンス発表、USMCA原産品は免除
アメリカ・CBPは、自動車部品の追加関税に関するガイダンスを発表。 USMCA原産品は追加関税を免除されることが明確化され、特にメキシコ産部品に恩恵が期待される。また、商務省は鉄鋼・アルミ関税の対象品目に関する追加プロセスを導入した。

・日米、第2回関税協議で前進を確認、早期合意を目指す
日本・アメリカ政府は関税措置を巡り第2回協議を実施。日本からは赤澤亮正経済再生相、アメリカからはスコット・ベッセント財務長官、ハワード・ラトニック商務長官、ジェミソン・グリア米国通商代表部(USTR)代表が参加。日本は措置見直しを要求し、貿易拡大や経済安全保障で議論を深めた。今後は事務レベル協議を経て、5月中旬以降に次回閣僚会議を開催予定。

5月2日
・中国系EC業者、米国への直接配送を停止
トランプ政権の中国輸入品へのデミニミスルール適用停止を受け、中国系EC業者がアメリカへの直接配送を停止。一部企業は関税負担を回避するため在庫出荷に切り替え、他方で値上げを実施する企業も増加。
*デミニミスリールの説明記事にリンクします。

5月3日
・トランプ政権、自動車部品に25%の関税発動、日本の部品メーカーへの影響が懸念
トランプ政権は自動車部品に対し、25%の追加関税を課す措置を発動。日本からの自動車部品の輸出に大きな影響を及ぼす可能性があり、部品メーカーの経営への影響が懸念される。一方で、アメリカ国内で生産された自動車に限定し、25%の関税負担を一部軽減する措置も行われる。石破首相は、「極めて残念」とコメント。日本政府として、引き続き関税措置の見直しを強く求めていく姿勢を示した。

・赤澤経済再生相「関税措置の見直しなしに合意は不可能」
赤澤経済再生相が日米交渉から帰国。一連の関税措置見直しを強く求め、これが合意の前提条件であると主張。交渉では一定の前進があったと評価し、事務レベル協議を進める方針を示したが、米国側は日本への特別扱いを否定。交渉の長期化が懸念される。

・ベッセント財務長官ら、日米交渉で「貿易上の懸念事項」を強調
アメリカ財務省は日米交渉で、日本の積極的な関与を歓迎するとともに、関税や非関税障壁、経済安全保障の重要性を強調したと声明を発表。米国側は迅速な合意を目指しており、今後は事務レベルや閣僚級協議を通じて一致点を探ることが課題となる。

5月5日
・トランプ大統領、海外製作映画に100%関税提案で波紋
トランプ大統領が海外製作映画に100%の関税を課すと自身のSNSアカウントで発表し、映画業界に衝撃が広がる。専門家はチケット価格の上昇や製作本数減少を懸念する一方で、国内産業への恩恵の可能性も議論されている。
*SNS(True Social)にリンクします。

5月6日
・アメリカ・カナダ首脳会談、主権問題で早くも火花
トランプ大統領とカナダのカーニー首相が初の対面会談を実施。冒頭は友好的に進むも、「カナダはアメリカの51番目の州になるべき」との発言をめぐり両者が激しく対立。カーニー首相はカナダの主権を強調しつつ、関税引き下げ交渉の可能性に言及。両国の溝が深まる中、今後の協議に注目が集まる。

・アメリカ財務長官、関税交渉で「今週中の合意」の可能性示唆
ベッセント財務長官は、議会下院の委員会の公聴会に出席。中国を除く17の主要貿易相手と交渉中で、いくつかの国とは今週中にも合意の可能性があると発言。関税引き下げや非関税障壁の問題で進展を見込み、年末までに広範な合意を目指すとした。

5月7日
・米中関税協議、スイスで実施へ
中国の何立峰副首相が米国のベッセント財務長官と関税問題を10~11日の2日間、スイスで協議予定と発表。中国商務部は、米国の一方的かつ不当な関税措置が世界経済に打撃を与えていると非難し、協議には相互尊重と互恵的な姿勢が不可欠だと強調。米国側が誠意を示さない場合、中国は妥協しないとの立場を表明。両国の主張が平行線をたどる中、交渉の行方が注目される。

・マツダ、関税措置に対応し、米国での現地生産拡大へ
マツダはトランプ政権の関税措置を受け、アメリカ・アラバマ工場での現地生産を増加させる方針を発表。同工場ではカナダ・メキシコ向けにも生産を行っているが、このうちカナダ向けをアメリカ国内向けに切り替え、関税の影響を軽減する戦略を進める。

・フォード、関税影響で価格引き上げへ—メキシコ生産車が対象
フォードはメキシコ生産のEVやSUVを対象に価格を引き上げる方針を発表。トランプ政権の25%追加関税措置が背景にあり、値上げは夏のキャンペーン終了後に実施予定。他メーカーの対応も注目される。

・トランプ大統領、8日に初の関税交渉合意発表と発言。
トランプ大統領は8日に関税交渉の初合意を発表すると自身のSNSで表明。有力紙はイギリスとの合意の可能性を報道。合意内容や最終的なものかどうかは不明で、各国の注目が集まっている。
*SNS(True Social)にリンクします。

5月8日
・アメリカ・イギリスが関税交渉で合意、自動車・鉄鋼関税緩和で協力強化
アメリカ・イギリスは、自動車の年間輸入10万台まで10%関税への引き下げや鉄鋼・アルミニウム関税の撤廃などで合意。米国は英市場への輸出機会を拡大し、英国は企業と雇用を保護する成果を強調。一方、農産品分野では英国国内で懸念の声も。

 

・EU、アメリカの自動車追加関税をWTOに提訴、対抗措置も視野
EUは、トランプ政権が自動車に25%の追加関税を課した措置をWTOに提訴する方針を発表。交渉が決裂した場合、最大15兆円規模の輸入品に対抗関税を課す計画も示唆。既存の鉄鋼・アルミニウム関税措置に対する対応と併せ、EUは交渉解決を模索しながらも強硬姿勢を維持している。

5月9日
・トランプ大統領、一律10%関税を原則維持と発言
トランプ大統領は一律10%関税を原則維持する方針を表明。交渉合意後も最低水準として適用を続ける考えを示し、例外は限定的と強調。英国に続き複数国との合意を期待する一方、中国に対しては相互譲歩を前提とする追加関税の調整を示唆した。

・トランプ政権、航空機輸入を調査—関税措置で日本企業に影響懸念
トランプ政権は航空機やエンジン部品の輸入が国家安全保障に与える影響を調査開始。調査結果次第で関税措置が導入される可能性があり、ボーイングに多くの部品を供給する日本企業に影響が及ぶ懸念が高まっている。6月3日までの期間でパブリックコメントの募集を開始した。
*連邦官報にリンクします。

5月10日
・米中貿易協議、スイスで開始、高関税摩擦解消へ初の高官会談
米中が互いに100%超の追加関税を課す中、両国高官による初の正式貿易協議がスイス・ジュネーブで開催。協議にはベッセント財務長官や何立峰副首相が参加し、関税摩擦や薬物流入問題を議論。中国側は公安相も派遣しフェンタニル問題も主要議題に。11日までの協議で、貿易対立の解消に向けた具体的な進展が得られるかが焦点となる。

5月11日
・米中貿易協議が終了、「大きな進展」と両国高官が評価
スイス・ジュネーブで行われた米中貿易協議が11日に終了。ベッセント財務長官と中国の何立峰副首相は「大きな進展があった」と発言。両国は経済貿易協議のメカニズム設立で一致し、さらなる協議を継続する方針。詳細は12日に共同声明で発表予定。

5月12日
・米中、追加関税115%引き下げで合意—貿易摩擦の緩和へ
アメリカ・中国の両国は、スイスでの協議を経て、相互に課していた追加関税を115%引き下げることに合意したことを発表。アメリカは145%の追加関税を115%引き下げ、最終的に10%を維持する方針で、うち24%は90日間停止。中国も125%の追加関税を115%引き下げて10%とし、同様に24%の停止措置を取る。両国は14日までにこれらを実施し、90日間の停止期間中に貿易関係の協議を継続し、協議メカニズムを構築する方針を示した。この合意により、異例の高関税状態が一時的に緩和され、経済の先行き不透明感が改善。トランプ大統領や中国政府は、引き続き貿易問題の解決に向けた協議を進める意向を示している。
*ホワイトハウス並びにSNS(True Social)にリンクします。

5月14日
・米中、追加関税を115%引き下げ
アメリカ・中国は、スイスでの協議を経て12日に発表した追加関税を、アメリカ東部時間午前0時過ぎより115%引き下げ。両国は、今後もアメリカの貿易赤字解消や市場開放、中国の関税撤廃要求を議題に協議を継続。トランプ大統領は関税再引き上げの可能性も示唆している。

5月15日
・日本政府、アメリカ関税措置めぐり戦略検討—3回目閣僚交渉に向けタスクフォース会合
日本政府は、米国の関税措置に対応するためタスクフォース会合を開催し、戦略や国内産業への影響分析を実施。赤澤経済再生担当大臣は早期合意を目指し、政府一丸で取り組む姿勢を強調。次回交渉の日程は未定だが、来週後半に調整が進む見通し。

・アメリカ税関、追加関税停止に伴う還付請求受付を開始
アメリカ税関・国境警備局(CBP)は、追加関税の累積停止に伴い、2025年3月4日以降の不要となった追加関税の還付請求を5月16日から開始。対象外となる分野や還付手続きの詳細は、税関の電子申請システム(ACE)を通じて行われる。
*CBPの発表にリンクします。

 

5月16日
・トランプ大統領、主要国以外は交渉せず、一方的に関税率通知か?

トランプ大統領は訪問先にUAEにて、貿易交渉の申し出が約150カ国からある中、「多くの国を一度に相手することはできない」として、今後2~3週間以内に新たな関税率を各国に書簡で通知する方針を示した。一部の国との交渉を省略した一方的な決定となる見込みで、現時点で対象国は不明。

・ウォルマート、トランプ関税によるコスト増を受け商品値上げ予定
アメリカの小売大手ウォルマートは、トランプ政権の関税措置によるコスト増を全て吸収するのは困難とし、商品価格の上昇が避けられないと表明。特に中国からの輸入品、電子機器やおもちゃなどに影響が見込まれる一方、食品価格は可能な限り抑制したいとの考えを示した。

True Social Donald J. Trump より引用

5月17日
・トランプ大統領がウォルマートの方針に対するコメントを発表
トランプ大統領は、自身のSNS/True Socialで、前日に発表されたウォルマートの方針に対するコメントを発表。関税を理由とした値上げをすべきではないと主張した。

5月18日
アメリカ、地域別同率関税を検討
ベッセント財務長官が、地域ごとに同じ率の関税を課す可能性に言及。ただし、現在交渉中の「18の重要な貿易相手国」に日本が含まれるか否かは不明。

5月19日
・石破首相、アメリカの関税措置について、赤澤経済再生大臣が今週訪米へ
石破首相は赤澤経済再生大臣が今週中にアメリカを訪れ、関税措置の3回目の閣僚交渉を行うと発表。関税措置の見直しに向けた対応を進める方針。

中国産品の追加関税引き下げについて

この3週間余りの中での大きなトピックは、米中間の追加関税、115%を双方引き下げることで合意したことです。米国へ輸入される中国産品に対する相互関税は、一時的(90日間)に125%から10%へ引き下げられることとなります。しばらくの間ですが、中国産品への関税のベースは10%(追加関税) + 25%( Section 301、2019年より導入済)+ 20% (IEEPA)= 55%と設定されます。

去る5月2日に改定された、中国発のECビジネスに大きな影響を与えているデミニミスルール(少額輸入品)も再度改定され、5月14日から関税率が54%に引き下げられました。ただし、1郵便物あたり100ドルの従量税は引き続き適用となります。

アメリカ・CBP発行 ガイダンスの更新:大統領令14256号に基づくデミニミスルールに関する連邦官報通知および運送業者向けガイダンス
アメリカ・CBP発行 国際郵便を取り扱う運送業者向けガイダンス(5月13日)
アメリカ・CBP発行の文書にリンクします。

また鉄鋼、アルミニウム、自動車、自動車部品にかかる品目別関税は引き下げの対象にはならず、それらの対象品目を輸入する場合は米国通商拡大法232条に応じた関税25%が発生します。

影響緩和に向けた陳情活動が始動 ホビー業界団体の取り組みの例

以前の本Navigationでご紹介いたしました中国から鉄道模型を輸入しているお客様より、関税引き上げに関する情報をいただきました。おもちゃやホビー業界の生産の多くが中国に依存しており、前項のウォルマートの発表の通り、価格上昇に繋がることが懸念されています。消費者に与える影響が深刻であると同時に、業界全体にも大きな打撃を受けることが予想されます。

こうした状況を受けて、ホビー業界団体が中心となり、関税引き上げの緩和や業界支援を求める陳情活動を議員や議会に対してスタートしました。現在、さまざまな業界からも同様の声が上がりつつあり、アメリカ国内でも業界団体と消費者が一体となってこの負担を軽減する動きが広がっています。

 

日新では、アメリカ現地法人・NIT(Nissin International Transport)と連携して、これらに関する最新情報を継続的にお届けしてまいります。

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