貨物をコンテナに固定する【ショアリング・ラッシング・チョッキング】とは
コンテナ内に貨物を詰める作業を「バンニング作業」と呼びますが、その際、航海中の揺れにより貨物が動かないようにしっかり固縛する作業も同時に必要となります。
品物の形状や重量、個数に合わせた安全面を最優先とするのはもちろんのこと、荷下ろし(デバンニング作業)時の作業効率や資材コストといった各種条件で固定(固縛)方法も決まってきます。
その固定(固縛)の方法として、ショアリング、ラッシング、チョッキングという言葉を聞いた方も多いと思いますが、各々の違いについて説明できる方は少ないのではないでしょうか。どれもコンテナ内で貨物を固縛する方法(セキュアリング)ですが、使用する資材や目的・手法に応じて、各々違った意味を持っています。
ショアリング | 木材や角材を用いて貨物を固定(固縛)する方法・作業 | |
ラッシング | ロープやチェーン、ベルト等を用いて貨物を固定(固縛)する方法・作業 | |
チョッキング | コンテナの妻板や側壁と貨物の間を角材等の支柱により水平方向の固定(固縛)を行う方法・作業 |
通常のドライコンテナの内部にピタリと収まる形状であれば、貨物が動いてしまうリスクは減りますが、毎回都合のよいサイズになるとは限りません。たいていの場合は、コンテナ妻面・側壁との間に何かしらの隙間が生じるため、必ず上記の内いずれかの固縛が行われています。
しかしコンテナ内部での作業になるため、完成したかたちを外側から見ることはまず不可能です。
そこで大型物・重量物を積載するために壁面も屋根もないフラットラックコンテナへ、スチール梱包を施した機械のバンニング作業をもとにご紹介いたします。
ミリ単位の調整が要求される積載作業
バンニングのためC突営業所に並んでいたのは、通常のドライコンテナのサイズを大きく上回るスチール梱包の箱。
この箱をフラットラックコンテナに積むのですが、その積み付け位置や重心位置は安全な荷役や輸送に欠かせない項目です。事前に梱包の仕上がりのサイズを入手し、「バンプラン」というコンテナへの積み付けの設計図を予め現場で準備しています。
そのパンプランに描かれた「壁面から〇〇ミリ」、「コンテナ側面からのはみ出しが〇〇ミリ」の指示に基づき、慎重な位置合わせが行われます。
大型のフォークリフトを用いて仮置きした後に、今度は貨物の四隅に作業員を配し、メジャーを当てながら数値をチェック。「こちらが○○ミリ前、そっちが○○ミリ後」と息の合ったチームワークで声を掛け合い、ものの数分で指定された位置にピタリと下ろしました。
また今回はスチール梱包のため、コンテナの床面と接する部分が金属同士で滑りやすく、小さなゴム板を挟むことで摩擦係数を上げ、滑りを防止することも必須事項です。
ラッシング・チョッキング作業
コンテナに積載する際には、中心側に重心を寄せることが基本となります。
また本船のセルガイドや荷役時のアタッチメントとの接触を避けるため、両妻面に密着させた状態ではなく、いくらかのスペースを空けて積載することも求められます。使用する船会社の規定によっても異なりますが、妻面から20~50cm程度離すのが一般的です。
コンテナの長手方向に加わる力に対しては、両妻面と貨物の間のスペースに角材をわたすことで貨物を固定(固縛)します。
その手順は①貨物と妻面に4本の柱を立てる②各々を上下で支えるように角材をわたすという手順で進みます。
貨物に対して斜めにつっかえ棒のようなかたちで入れるのがよいのではと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、それだけでは強度が足りず、四角を組み上げ面で構成して支えることで強度が上がり貨物をしっかり固定することができます。
各部にメジャーを当ててサイズを測り、大小様々なパーツにチェーンソーを用いて切り出します。最後に入れる角材は、少し角を落として入れやすくする、芸の細かな部分もあります。
使用する角材はその貨物サイズや形状、積載する船社の規定によっても異なりますが、今回は一般的な9㎝×9cmの「三寸角」と呼ばれる材木と9cm×4.5cmの「半割(はんわり)」と呼ばれるサイズを補助的に用いています。
こららの材木は建築用に用いられるものではなく輸出梱包専用に用意されたもので、材木に寄生する病害虫の蔓延を防ぐために燻蒸処理されています。これは2002年にスタートした国際基準で定められており(ISPM No.15)、現在はEUや米国、中国・台湾、ベトナム・マレーシア等、世界80カ国向けに輸出される際には、使用が義務付けられております。
燻蒸方法は大別すると2種類あり、①中心温度が56℃以上で30分以上加熱、 ②指定薬剤(臭化メチルなど)で16時間以上 といった処理方法があります。ちなみに日本は2007年から本規制を導入し日本向けに発送される梱包用の材木は、燻蒸処理が施されたものと規定されています。
これらの材木を固定するのには、一般的な釘が用いられています。
長さは125mm、以前は四寸釘と呼ばれたサイズで「三寸角」と「半割」を重ねて打ち込んでも、抜け切ることがない長さとなっています。この長い釘を各所に打ち込み、四角の構造体を構築して行きます。
狭い部分もしっかりチョッキング
今回作業を行った中では、狭い部分に時間を要しました。
小さなサイズの材木を重ねながら組み上げて固定する作業は、部材の構成や組み上げの経験が重要となります。
今回取材した本牧C突営業所は、日常的に特殊コンテナのチョッキング作業に関わる現場ですので、スムーズに作業が進みました。金づちを振り上げるにも自由のきかない狭いスペースでも、他と同程度の強度が要求される部分なので、手が抜けません。
仕上げのラッシングを施す
妻面に木枠を組み、前後方向の固定あの終わった後は、品物を直接コンテナに固縛をするラッシング作業を行います。
かつてはワイヤーで固定することが一般的でしたが、現在はポリエステル製のラッシングベルトを用いております。破断強度が20tの性能を持つベルトですが、当社では必要となる強度の2倍を規定値として、使用する本数や位置を決定しています。ベルトをフラットラックコンテナ・側面下部のリングに通し、専用の締め機(テンショナー)とバックルを用いて、強力に締め上げ固定します。
ベルトが当たる角の部分はどうしても強度が落ちてしまうことがあるため、角の部分へウエスを挟むなどの対応を行い強度を保ちます。また長い航海の間には悪天候が予想されることもあり、その際には使用するベルトの本数を増やすなど、安全に対するちょっとしたひと手間を加えます。
過去の経験を活かし、お客様の輸送ニーズに合わせた安全を提案すること、それも本牧C突営業所の得意とするところです。
また今回ご紹介した作業は全て本牧C突営業所の常駐スタッフによるもので、日々の作業を通じて様々なノウハウを蓄積して作業に当たっています。大型・重量品の取扱いは外注スタッフに任せることが多い中、貨物の特性を理解し最も適切な作業を行えるのは、常駐スタッフだからこそなせる業です。そのチームワークの良さとスピーディーな仕事ぶりからバンニング職人と呼ばれています。
安全とコストはどうしても反目してしまうことがあり、特に海外の受け側のお客様は事故が起きていないのだから、もっと簡易な固縛に切り替えてはどうか?といったご相談をいただくことがあります。
もちろん、それに対する何らかの提案を考えるものの現行の固定(固縛)作業があってこそ事故が避けられているともいえるため固定(固縛)の簡素化はむずかしい点でもあります。それでも反目する2つを成り立たせる方法はないか?と作業のたび向き合い、お客様に最適な提案をできるように日々業務にあたります。
自社のスタッフだから分かること、できること。それが本牧C突営業所のProfessional Serviceを支えています。
動画でみるバンニング作業
INFORMATION
株式会社日新 本牧C突営業所
- 所在地 : 神奈川県横浜市中区本牧埠頭1-1 C-3号上屋
- 構 造 : 鉄骨造平屋建(低床式)
- 敷地面積: 6,800㎡
- 保管面積: 2,856㎡