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ウチの展示品、5トンコンテナ【ゴトコン】で運んでみました!

10月に福岡で開催された九州次世代物流展。日新は九州日新と共同で出展し、福岡県・熊本県で建設が進む2つの新倉庫の他、DXサービスを中心に展示を行いました。その中で、リチウム電池の保管容器(LiBerth)や展示用品を東京から福岡へ運ぶ必要が生まれました。トラックでの長距離輸送も選択肢ですが、「JRの鉄道コンテナ輸送を自ら使ってみよう!」と、5tコンテナ(通称ゴトコン、12fコンテナ)での輸送を試してみました。あまり実態の知られていない集荷から納品までの流れ、その輸送の仕組みを動画も交えてご紹介いたします。

「運ぶ」だけじゃない!日新ドライバーが担うプロの仕事

コンテナの扉を開け、荷役の準備をする

今回の輸送のため、まずは横浜市内の新興倉庫に荷物を集約。貨物専用の横浜羽沢駅構内に位置する羽沢営業所に依頼して鉄道輸送の手配と同時に、横浜・福岡での集配送のトラック手配も依頼しました。集荷に駆けつけてくれたのは、羽沢営業所所属の萩原さん。ドライバー歴30年近い大ベテランです。萩原さんの仕事は、単にコンテナを輸送するだけではありません。コンテナへの積み付け、荷下ろしまでを担当範囲としています。現代の鉄道貨物輸送はコンテナが主体となりますが、最寄駅からの集荷・配送を含めた一貫輸送が一般的です。品物の性質によっては、バラ積みにも対応する、きめ細やかな対応が可能となっています。

LiBerth / LiBボックス B typeを積み込む

今回の荷物は、リチウムイオン電池の静脈物流ソリューション LiBerth(リバース)の専用金属製容器 LiB ボックス A・B typeと、展示会用の事務用品・備品でした。 現場では、フォークリフトでLiBボックスをコンテナ内に積み込みました。異なる形状の荷物をコンテナ内で安定させるには熟練の技術が必要です。積込後、輸送中の安全のため、固縛用のベルトをかけてしっかりと固定する作業も行いました。特に展示品ということで、ベルトが品物を傷付けないように、養生を行うなど、安全・確実な長距離輸送を行うべく、細心の注意が払われました。

ラッシングベルトで品物を固定する

日新の羽沢営業所では、食品関連の品物を多く扱っているため、コンテナ内部の状態には常に細心の注意を払っています。 お客様に空コンテナを配送する前には、細かな部分まで清掃を行い、養生紙を敷き詰めるといった細やかな作業を欠かしません。こうした徹底した衛生管理と荷物を守るという意識が、今回のデリケートな展示品輸送にも活かされています。

 

 

本記事で使用した、LiBボックスを積んだ5トンコンテナ(ゴトコン)輸送の全工程を、動画でリアルにお届けいたします。熟練ドライバーによる緻密な積み付け・固縛作業から、JR貨物横浜羽沢駅構内での厳格なチェック、そして貨車への積み込みまで。文字だけでは伝わらないプロの仕事と物流現場の迫力を、ぜひ動画でご確認ください。

鉄道輸送の玄関口へ!横浜羽沢駅の舞台裏

コンテナへの積み付けと固縛を終え、いよいよ萩原さんのトラックに同乗して、鉄道輸送のハブである横浜羽沢駅へと向かいます。生麦から横羽線~三ッ沢線を経由して、最寄の保土ヶ谷ICに向かいます。

萩原さんの運転で出発
生麦から横羽線へ
横浜駅付近を通過
横浜羽沢駅に到着
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萩原さんの運転で出発
生麦から横羽線へ
横浜駅付近を通過
横浜羽沢駅に到着
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横浜羽沢駅は、横浜駅の西北西約7kmに位置するJR貨物専用駅です。駅の近くには、第三京浜道路の羽沢インターチェンジ(IC)や環状2号線が通っており、横浜市内の広域的な集配送に対応できる極めて交通アクセスに優れた立地にあります。首都圏から各地へ向かう鉄道貨物輸送の重要拠点の一つとして機能しています。鉄道コンテナ輸送の手配を行う、日新・羽沢営業所も、構内の一角に事務所を構えています。

ここで見えてきたのは、安心・確実な長距離輸送を支えるJR貨物の厳格な管理体制と、日新のプロによる最終確認でした。

構内に入ると、そこには15km/h厳守、基本的に一方通行というルールで、それに従いトラックを進めます。まず最初にJR貨物の受付所へ移動。ここでは、各種情報をPC端末で入力・確認を行います。具体的には集荷伝票のバーコードを読み取ると、コンテナ番号や封印環番号などの固有情報が掲示され、画面の指示に従って確認を進めます。このデジタル化された手続きによって、構内のどこにコンテナを搬入すべきか、行き先別・列車別に整理された指示が瞬時にドライバーへ伝えられます。

羽沢営業所で荷票を準備する
受付所のPC端末
搬入を前に最終確認を行う
福岡タ行きの貨車
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羽沢営業所で荷票を準備する
受付所のPC端末
搬入を前に最終確認を行う
福岡タ行きの貨車
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しかし、これで終わりではありません。プロの仕事は、最後まで手を抜きません。萩原さんは、構内に着いてから再度コンテナの扉を開け、内部を確認しました。長距離輸送の前に、積み付けの緩みや荷崩れがないか最終チェックを行い、問題がないことを確認してから封印環を取り付けます。この最後の確認こそが、輸送中の荷物の安全を最終的に保証する、日新ドライバーの責任感の証です。

厳格な安全の門番!貨車への積み込みと裏側のルール

最終確認を終えたコンテナは、いよいよ貨車への積み込み段階へと移ります。

構内を走行するトラックが必ず通過するのが、「偏積測定」と呼ばれる、自動で偏荷重をチェックする機械です。これは、コンテナ内の積み付けバランス(前後左右の偏り)を自動で測定するシステムで、少しでもバランスが悪いと赤信号が点灯し、積み直しが必要となります。鉄道輸送の安全運行を根幹から支える厳格なチェックですが、私たちのコンテナは問題なく青信号でクリアし、コンテナホームへと進むことができました。

入口で偏積測定を実施
問題なければ青が点灯
コンテナホームを進む
福岡タ行きの貨車
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入口で偏積測定を実施
問題なければ青が点灯
コンテナホームを進む
福岡タ行きの貨車
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受付データはすぐにフォークリフトのオペレーターに共有され、私たちのトラックが指定位置に向かうと、オペレーターが既に待ち構えているという迅速な連携体制。フォークリフトによってスムースに、福岡貨物ターミナル行き・1059列車へと積み込まれました。

フォークリフトが到着、荷役開始
トラックからコンテナを下ろす
貨車の所定位置へ載せる
貨車への積載完了
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フォークリフトが到着、荷役開始
トラックからコンテナを下ろす
貨車の所定位置へ載せる
貨車への積載完了
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取材時、別の列車の荷役作業が行われていたため、コンテナホームへの立入が一時的に制限されました。構内では、ドライバーといえども許可なく車両を降りるのはアウトというルールが徹底されています。私たちは車内での待機となりましたが、この徹底した安全対策の一つ一つの積み重ねが、JR貨物による鉄道輸送の信頼性を高めているのです。

発車の10分ほど前になると制限も解除され、搬入作業は無事すべて完了。LiBボックスや展示用品を積んだコンテナは、こうして横浜から福岡への長距離旅に送り出されました。

福岡に無事到着!リードタイムと無料保管サービスの強み

横浜羽沢を深夜0:40に発車した1059列車は、東海道本線・山陽本線を一路西へ。途中、岐阜貨物ターミナル、姫路貨物、広島貨物ターミナル、北九州貨物ターミナルに停車・荷役を繰り返しながら、同日の22:26に福岡貨物ターミナルに無事到着しました。1,158kmの距離を、約22時間というリードタイムで駆け抜けたことになります。

9月27日(土)の深夜に福岡に到着したコンテナは、9月30日(火)の九州日新・アイランドロジスティクスセンター(ICLC)への配送を控えて、福岡貨物ターミナル駅構内で一時保管されました。この保管サービスこそ、鉄道コンテナ輸送の大きなメリットの一つです。原則として、発地・着地共にそれぞれ5日間の無料保管が可能となっており、利用者の都合に合わせて集荷・配送のタイミングを柔軟に調整できるため、サプライチェーンの安定化に大きく貢献します。

九州日新 アイランドシティ ロジスティクスセンター(ICLC)

コンテナの届け先であるICLCは、常温・空調・冷蔵の3温度帯を持つ旗艦倉庫で、日々多様な商品の在庫管理やクロスドッキングに対応しています。またコンパクトシティと呼ばれる福岡に相応しく、福岡空港まで約9km、博多港コンテナターミナルは僅か300m、そして今回コンテナが到着した福岡貨物ターミナルは約4kmと、陸・海・空のすべてにアクセスできる物流拠点として最適な立地にあります。

無事到着した5tコンテナ
LiBボックス/Bタイプから下ろす
続いてAタイプを下ろす
展示会場に搬入
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無事到着した5tコンテナ
LiBボックス/Bタイプから下ろす
続いてAタイプを下ろす
展示会場に搬入
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ICLCでの5トンコンテナの荷卸しは、低床式プラットホームで行われました。特筆すべきは、建屋を貫く全長約100mの全天候型・屋内車路です。これにより、荒天時でも水濡れの心配がなく、LiBボックスのようなデリケートな荷物や展示品も、雨風にさらされることなく、安全に荷役作業や倉庫内への転送が可能となっています。今回輸送したLiBボックスは、その後無事展示会場のマリンメッセ福岡に搬入され、会期中の2日間、リチウムイオン電池の静脈物流ソリューション「LiBerth」のPRを行いました。

輸送の特性と最適な活用法とは?

今回の輸送を計画するにあたり、まず最初に行ったのは、JR貨物が発行しているコンテナ時刻表を見て、輸送ルートの詳細を確認することです。(コンテナ時刻表はこちらからご覧いただけます。)集荷元となる新興倉庫の最寄りの横浜羽沢駅から、納品先であるアイランドシティロジスティクスセンターの最寄りの福岡貨物ターミナルまでのダイヤや運行距離を確認します。この時刻表には、駅ごとに各目的地駅への列車時刻や締切時間、そして運賃計算の根拠となるキロ程(距離)が記されています。この確認により、横浜羽沢から福岡貨物ターミナルまで、直通列車があることが分かりました。

横浜〜福岡間の運行ダイヤと距離

列車番号 区間 発車時刻(締切時間) 到着時刻(引渡時間) 運行距離(キロ程)
1059列車 横浜羽沢 福岡貨物ターミナル 0:40発(締切 22:54) 22:26着(引渡 22:47) 1,158km

鉄道は広域の路線網で運行されるため、豪雨や地震などの自然災害による遅延や運休が発生する可能性があります。長距離輸送の特性上、輸送途中のどこかで障害が発生した場合、影響の解消に時間を要する場合があります。基本的に設定された列車ダイヤに基づいて運行されるため、トラック輸送のような柔軟な時間指定や輸送計画の急な変更には制約があります。

これらの特性を考慮すると、鉄道コンテナ輸送はすべての輸送に適しているわけではありません。鉄道輸送が効果を発揮する一例として、以下の条件を満たす場合と考えられます。

距離:ある程度の距離(概ね400〜500km以上)の定期的な輸送。
商流:輸送上の制約をあらかじめ許容できる(リードタイムに多少の余裕がある)商流。

これらの条件が揃えば、コスト効率、環境負荷低減、そして安定的な輸送力という大きなメリットが生まれます。特に環境負荷低減については、鉄道輸送はトラック輸送と比較し、約1/6という極めて低いCO2排出量に抑えられます。今回のLiBボックス輸送のように、鉄道輸送を選ぶことは、企業が求める持続可能なサプライチェーンの実現に直接貢献する、戦略的な選択となるのです。

実際に運賃を計算してみよう

オンレール部分(鉄道輸送):
貨物の種類、コンテナの大きさ、輸送距離などによって決定される、鉄道区間の運賃です。

オフレール部分(トラック輸送):
発地・着地の駅から、集荷・配達にかかるトラックの費用です。

貨物時刻表には、コンテナ賃率表(運賃表)が掲載されている

それでは具体的に運賃がどのような計算式で成り立つのか?今回の輸送を例として、実際に計算してみました。尚、金額や条件は、2025貨物時刻表(公益社団法人 鉄道貨物協会)に掲載されている金額を根拠としております。金額は概算であり、実際には品物の性質、物量や利用頻度、発着地・駅などの条件により金額が異なりますので、個別にお問合せいただくことが必要となります。

オンレール輸送(鉄道輸送)
横浜羽沢⇒福岡貨物ターミナル 1,158km
コンテナ貨物賃率(運賃)  ¥13,982(1トンたり、1,200kmまで、消費税別途)
¥13,982 X 5㌧ =        ¥69,910(5トンコンテナを運んだ場合の運賃)

ここで鉄道運賃の端数処理が入ります。
⇒計算した金額が¥10,000未満の時は¥100単位に、¥10,000をこえる時は500円単位に端数を切り上げます。この条件を適用すると、¥70,000が鉄道運賃となります。

オフレール輸送(発送料・着送料、最寄駅からのトラック料金)
この費用は、集荷先・配送先から最寄駅までの直線距離が運賃計算のベースとなります。今回の輸送を当てはめますと、以下の通りとなります。

(集荷料)日新 新興倉庫から横浜羽沢駅まで     直線距離で10km圏内
条件:政令指定都市(大阪市を除く)に所在する駅 ¥10,970/5トンコンテナ

(配送料)福岡貨物ターミナルから九州日新 ICLCまで    直線距離で10km圏内
条件:政令指定都市(大阪市を除く)に所在する駅 ¥10,970/5トンコンテナ

こちらでも端数処理が入り、計算した金額の100円未満の端数は、100円に切り上げます。¥10,970 x 2 = ¥21,940  (端数処理)⇒¥22,000となります。

1と2の合計額の¥92,000が、今回の概算輸送料金となります。JR貨物のホームページ上でも、概算費用の算出が可能となっております。(JR貨物ホームページ「輸送日数・費用・CO2排出量の概算算出ページ」)

 

鉄道コンテナ輸送がもたらす戦略的なメリット

今回の輸送事例(横浜羽沢駅~福岡貨物ターミナル間)でも示したように、長距離直通列車を活用した鉄道コンテナ輸送は、「概ね400〜500km以上の定期的な輸送」「リードタイムに余裕のある商流」において、その真価を発揮します。

環境負荷低減は、その最大のメリットの一つです。今回の輸送(12フィートコンテナ使用時)では、CO2排出量をトラック輸送と比較して91%減となる142kgに抑えることができました。(算出はJR貨物ホームページ「輸送日数・費用・CO2排出量の概算算出ページ」に拠る)

この低排出量は、企業が求める持続可能なサプライチェーンの実現に直接貢献する戦略的な選択となります。さらに、環境アプローチだけでなく、「2024年問題」として注目される人手不足への対応策としても、鉄道輸送は安定的な輸送力を提供します。

貴社のサプライチェーンにおけるコスト効率化、環境負荷低減、そして輸送安定化への対応として、この機会にぜひ「鉄道の可能性」をご検討ください。

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