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アメリカ関税政策 Part4 4月1日から現在までの最新情報をお届け!

これまで3回にわたりご紹介してきたアメリカの関税政策ですが、4月に入っても目まぐるしい動きが続いています。特にアメリカと中国の間では貿易戦争を辞さない姿勢の報復措置が繰り返されており、注目が集まっています。本記事では、4月上旬に起こった最新の出来事をお伝えします。

過去3回の配信記事も合わせてご参照ください。
2月12日配信 第一弾記事はこちらから
3月12日配信 第二弾記事はこちらから
4月9日配信      第三段記事はこちらから

 

 

 

4月1日から現在までの動き

4月に入って僅か半月あまりですが、日々多くの発表がなされ、状況が二転三転しているのは、報道されている通りです。こちらでは4月1日以降の動きを、時系列でご紹介いたします。

4月1日
・ホワイトハウスが相互関税の詳細を発表すると明らかにする
トランプ大統領が米国東部時間2日午後4時に開くイベント「アメリカを再び豊かに」で演説し、相互関税の詳細を明らかにすると発表。

4月2日
・トランプ大統領が、相互関税を課す大統領令を発表
米国東部時間2日午後4時に開かれた「アメリカを再び豊かに」と題されたイベントで、「解放の日(Liberation Day)」として相互関税の詳細を発表。
①全ての国からの輸入品に対して、10%の関税を4月5日午前0:01(米国東部時間)から導入する
②貿易赤字の要因や安全保障上の脅威を取り除くことを目的として、特定の国・地域からの輸入品に対しては、国毎の関税を導入することを発表。4月9日午前0:01(米国東部時間)から導入する。

・ホワイトハウス レビット報道官 再度”アメリカ産のコメに700%の関税”
ホワイトハウスのレビット報道官は、アメリカの輸入品に高い関税を設定している国としてEUやインド、カナダ、日本を名指し、3月11日に続いてアメリカ産のコメに700%の関税と発言。

 

但しカナダとメキシコに対しては、既に追加関税を課しており、今回の関税措置は適用しない。米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の原産地規則を満たしている製品に関税は課されない。

4月3日
・シンガポール、対抗措置は導入せず
シンガポールのガン・キムヨン副首相は、10%のベースライン関税を課すとしたことに、失望を表明した。しかし対抗措置を取らない方針を示した。

・香港は強い不満を表明
香港政府は中国本土と同様に相互関税、デミニミスルール(800ドル以下の少額貨物の関税を免除する制度)撤回に対し、強い不満を表明した。

・ベトナム政府が関税の適用延期を要請
ベトナム政府が関税46%の適用延期を求める文書をアメリカ政府宛に送付、USTRとの事務レベル協議を調整中と発表。

4月4日
・中国が対抗措置として、アメリカ産品への追加関税を発表
中国政府は、前日に発表された相互関税の対抗策として、アメリカ産の全輸入品に対し、34%の追加関税を課すことを発表。4月10日午前0:01から発動。但し4月10日午前0:01以前に出荷、10日午前0:01~5月14日午前0:00までに輸入された貨物は除外。

4月5日
・アメリカが相互関税10%を発動する
2日の演説で表明された通り、全ての国からアメリカへの輸入品に対し、10%の関税をアメリカ東部時間午前0:01から導入。

4月7日
・トランプ大統領が中国に対する報復関税を示唆
トランプ大統領がSNSで、4日に中国が発表したアメリカ産品に対する34%の報復関税を8日までに撤回しない限り、更なる追加関税50%を導入するとコメント。既に導入されている関税と合わせると、合計104%の関税となる可能性となる。

4月8日
・ホワイトハウスが中国に対する追加関税引き上げを発表
レビット報道官が中国に対する関税措置をめぐり、9日午前0:01(アメリカ東部時間)よりに追加関税を104%に引き上げると発表。

4月9日
・国別の相互関税が発動
4月5日に導入された全ての国・地域を対象とした10%の関税に続き、国別に設定された関税を9日午前0:01(米国東部時間)より導入した。日本に対しては、別に設定されているものを除き、24%の関税が課されることとなる。また中国に対する追加関税は、104%に引き上げられた。

・中国がアメリカ追加関税の対抗措置を発表
中国政府は、アメリカが中国産品への追加関税を104%に引き上げたことの対抗措置として、アメリカ産品の輸入品の追加関税を50%引き上げ、84%にすると発表した。


・トランプ大統領が国別の相互関税の90日間停止を発表、中国に対しては関税引き上げ
9日に導入した国別の相互関税は、多くの国が交渉のテーブル着いたとして、90日間の停止を発表した。しかし報復措置を取った中国に対しては、追加関税を125%に引き上げることとした。

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Based on the lack of respect that China has shown to the World’s Markets, I am hereby raising the Tariff charged to China by the United States of America to 125%, effective immediately. At some point, hopefully in the near future, China will realize that the days of ripping off the U.S.A., and other Countries, is no longer sustainable or acceptable. Conversely, and based on the fact that more than 75 Countries have called Representatives of the United States, including the Departments of Commerce, Treasury, and the USTR, to negotiate a solution to the subjects being discussed relative to Trade, Trade Barriers, Tariffs, Currency Manipulation, and Non Monetary Tariffs, and that these Countries have not, at my strong suggestion, retaliated in any way, shape, or form against the United States, I have authorized a 90 day PAUSE, and a substantially lowered Reciprocal Tariff during this period, of 10%, also effective immediately. Thank you for your attention to this matter!

(翻訳文)
中国が世界市場に示してきた敬意の欠如に基づき、私は、アメリカ合衆国が中国に課している関税を125%に引き上げることを、即時に発効する形でここに決定しました。近い将来、中国がアメリカ合衆国や他国を搾取する時代がもはや持続可能でも受け入れられるものでもないことを理解することを願っています。

一方で、75を超える国々がアメリカ合衆国の代表者、商務省、財務省、そして米国通商代表部(USTR)を含む機関に連絡を取り、貿易、貿易障壁、関税、通貨操作、そして非貨幣的関税に関連する議題について解決策を交渉しようとしている事実に基づき、また、私の強い提案に従い、これらの国々がアメリカ合衆国に対していかなる形でも報復を行わなかったことを考慮して、私はここに90日間の一時停止を許可し、この期間中に大幅に引き下げられた相互関税を10%に設定することを決定しました。この措置も即時に発効します。
(True Social  4/10 2:18AM Donald J. Trumpアカウントより引用)

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4月10日
ホワイトハウスが中国に対する追加関税が145%になることを発表
トランプ大統領が中国に対する追加関税を125%に引き上げることを発表したが、その後にホワイトハウスが既に導入済の関税(合成麻薬:フェンタニルの対策関連)20%と合わせた累計になることを発表した。

4月11日
・中国政府が更なる報復関税を発表
10日にアメリカ側の追加関税が145%とする発表を受けて、中国政府が125%の報復関税の導入を発表。同時に今後アメリカが関税を引き上げても、中国は対抗しない考えで無視すると政府関係者がコメントする。

・トランプ政権、相互関税の対象から電子機器類を除外する方針を発表
スマートフォンやコンピューターなどの電子機器類を、相互関税の対象から除外することを発表。中国への依存度が高く、アメリカ国内での価格高騰・混乱を避けるためと推測される。

4月12日
・ホワイトハウス報道官が中国の報復措置に対するコメントを発表
ホワイトハウスのレビット報道官は、「中国は報復措置をとるべきではない」と発表し、同時に「トランプ大統領は中国との取引に対して、前向きな姿勢でいる」とコメントを出す。

・赤澤経済再生相が16日からアメリカを訪問
交渉担当閣僚の赤澤経済再生相は、4月16日から3日間の予定でアメリカを訪問し、アメリカ側担当のベッセント財務長官や米国通商代表部(USTR)のグリア代表との初めての日米交渉を行うと発表。

4月13日
・電子機器類を相互関税対象から除外することについて、中国商務省がコメント
11日にトランプ政権が電子機器類を相互関税対象から外したことに対し、「アメリカが一方的な関税政策の誤りを是正する小さな一歩と言える」とコメントを発表、対話での解決を求めた。

・トランプ大統領が半導体関税措置 について、来週中にも発表とコメント
トランプ大統領は、来週中にも半導体を対象とした関税の詳細を発表すると表明。11日に電子機器類を相互関税対象から外すとコメントしていたが、相互関税の除外ではなく、別の関税の導入を示唆。ラトニック商務長官は、1~2カ月以内に半導体を対象とした関税の中に、電子機器を盛り込む方針を示す。

4月14日
・トランプ大統領、自動車関税の一部見直し検討
トランプ米大統領は、アメリカ国内での製造移転を促すため、輸入自動車や部品に課している関税を一時免除または見直す可能性を検討していると発言した。具体的な措置や内容については明言せず。

・ホワイトハウスが半導体と医薬品の輸入状況の調査を開始
 13日にトランプ大統領が表明した半導体への関税導入に加えて、医薬品への関税に導入についても輸入状況の調査を開始したことを14日付けの官報で公示。今後関係者からの意見聴取を3週間程度で行い、関税導入に向けた動きを本格化させる。

トランプ政権の関税政策に関連してのQ&A(補足)

4月9日に配信した「U.S. Tariff Part3」では、弊社米国法人であるNIT(Nissin International Transport Inc)のQ&Aをご紹介しました。このたび、状況の変化に伴い、新たな補足Q&Aを作成いたしましたので、改めてご紹介いたします。

Q. 90日間延期となった国別相互関税はいつから適用予定か?
A. 米国東岸時間で7月9日午前0:01よりスタートとなります。但し、90日間の間に各国は米政権との交渉に入りますので、Annex Iで開示されたレートから変更が入る可能性はあります。
(ホワイトハウスの発表にリンクいたします。)

Q. クーリエ便で日本産品への相互関税24%の請求事例があった。国別相互関税は既に始まっているのか。
A. 上記の通り、7月9日までは延期されており、それまでの相互関税率は中国を除き10%となります。お支払前に許可書を確認されることをお勧め致します。

Q. 中国製品への基本的な関税率がどうなっているのか改めて知りたい
A. 中国製品に関しては…
25% (Section 301、2019年より導入済)
20% (IEEPA)
125% (相互関税)
…合計170%が現在のベースとなっております。(製品によって例外がありますのでご注意下さい。)

Q. 鉄鋼アルミ・自動車関税と、相互関税は本当に重複して発生することはないのか。また鉄鋼アルミ・自動車関税が優先されると考えてよいのか?
A. 以下Whitehouseの条文を根拠として、現在のところ、弊社としてはそのように理解しております。該当箇所抜粋になります。
(b)  The following goods as set forth in Annex II to this order, consistent with law, shall not be subject to the ad valorem rates of duty under this order:  (i) all articles that are encompassed by 50 U.S.C. 1702(b); (ii) all articles and derivatives of steel and aluminum subject to the duties imposed pursuant to section 232 of the Trade Expansion Act of 1962 and proclaimed in Proclamation 9704 of March 8, 2018 (Adjusting Imports of Aluminum Into the United States), as amended, Proclamation 9705 of March 8, 2018 (Adjusting Imports of Steel Into the United States), as amended, and Proclamation 9980 of January 24, 2020 (Adjusting Imports of Derivative Aluminum Articles and Derivative Steel Articles Into the United States), as amended, Proclamation 10895 of February 10, 2025 (Adjusting Imports of Aluminum Into the United States), and Proclamation 10896 of February 10, 2025 (Adjusting Imports of Steel into the United States); (iii) all automobiles and automotive parts subject to the additional duties imposed pursuant to section 232 of the Trade Expansion Act of 1962, as amended, and proclaimed in Proclamation 10908 of March 26, 2025 (Adjusting Imports of Automobiles and Automobile Parts Into the United States);
4月2日発表 ホワイトハウス条文へリンクします。

Q. 米国におけるタリフジャンプ(HTS Code変更)の基準を知りたい。
A. 国別相互関税をミニマイズする手段として、原産国変更が御座います。調達先を第三国に変更するか、あるいは、第三国での加工を経てHTS Codeを変更すること(=タリフジャンプ)が原産国変更の手段として考えられます。その際のルールについて以下サイトよりご参照ください。
タリフジャンプの規則にリンクします。

一例として、8540.11へのタリフジャンプを狙う場合には以下の通りとなっています
A change to subheading 8540.11 through 8540.20 from any other subheading, including another subheading within that group.
Subheading = HTS Codeの上6桁を表しています。(因みにHeading = HTS Codeの上4桁)
上記を読み解きますと、タリフジャンプの解釈は以下の通りとなります。
8540.11.1030が8540.11.2410になったとしても、Subheadingが変わっていないのでタリフジャンプとは呼べない。
8540.20.4000が8540.11.2410になった場合には、Subheadingが変わっているのでタリフジャンプと呼べる
(記載内容はあくまで説明用のサンプルです。)

またHTS Codeによっては、特定のHTS Codeからの変更はSubheadingが変わっていてもタリフジャンプを認められないケースもございます。
例:8708.40に関して、8708.50、8708.80〜8708.92、8708.94〜8708.99からの変更はタリフジャンプとは呼べない、など。
詳しくは上記サイトよりご確認をお願いいたします。

Q. 鉄鋼アルミ関税に適用対象が増えたと聞いたが、事実か?
A. 事実です。アルミ缶(7612.90.10)、缶ビール(2203.00.00.60、2203.00.00.90)が適用対象として増えております。
以下、追加後の最新の鉄鋼アルミ対象リストとなります。

追加関税に関して・現状のマトリクス表
現状の追加関税政策に関してのマトリクス表へリンクいたします。

 

中国船籍の本船の入港に関して

Global Terminal, Bayonne, New Jersey

中国で建造された本船や中国船籍の本船を対象に、アメリカへ寄港する際に、高額な入港料(もしくは入港税)を課す制度が検討されている動きがあることは、過去配信の記事でもご紹介させていただきました。今年2月はパブリックコメントの受付、3月下旬は議会による公聴会が開催され、導入に向けた動きが活発となってきております。

公聴会では、海運関連企業が現状について意見を述べました。中国で建造された船舶が全体の約半数を占め、多くの中国船籍の船舶がアメリカに寄港している現状を考慮すると、この制度に対しては否定的な意見が多く寄せられました。

一方で、アメリカの造船業界の弱体化が国家安全保障を脅かす要因となっているとの指摘があり、この問題を是正するための対策が進められています。

そして、4月9日には「アメリカの海事優位性の回復(Restoring America’s Maritime Dominance)」と題した大統領令が発表されました。
(ホワイトハウスのHPにリンクいたします)

現時点では具体的な制度や措置について明確な決定はされていませんが、この大統領令に基づき、今後(大統領令が発表された4月9日から)210日以内に関係する複数の政府機関がアメリカの造船業を強化する具体的な方法を策定することが指示されています。その際に、より詳細な政策が提示される見込みです。実行まではまだ時間があるものの、関税政策に続く新たなリスクの可能性として、注視すべき動きです。

日新では米国現地法人 NIT / Nissin International Transportと連携して、日々最新情報の入手や確認を行っております。今後も読者のみなさまのお役に立つ情報をご紹介したいと思います。

関税政策がスタートしてから3カ月余りが経過しました。日本では、連日その関税率や交渉の進展に関するニュースが報じられていますが、現地の担当者に生活面での実感を尋ねたところ、次のような話を伺いました。
「以前は1カゴ(約5~6個)のアボカドが3~4ドルで買えたのに、今では急に10ドル近くになり、気軽に買えなくなりました。」

このように、市民生活に直接影響を及ぼす場面は少ないものの、今後さまざまな場面でこのような影響が顕在化してくる可能性があります。

 

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