そもそもB/L(=船荷証券)とは?
B/L(ビーエル)と略されて呼ばれていますが、正式名称はBILL OF LADING(船荷証券)になります。
国際海上輸送においては最も重要な書類の一つで、運送人(船会社やフォワーダー)が荷送人(SHIPPER)に対して発行します。B/Lには運送人と荷送人との間で結ばれた運送契約の内容と貨物の詳細が記載されています。
B/Lは発行会社によって多少の差異はございますが、基本的には以下の項目が記されており、運送契約の詳細を把握することができます。
B/Lの表面をみてみよう
券面と呼ばれるB/Lの表面には、下記のような内容を中心に様々な記載事項があります。
① | 「誰が」「誰に」対して輸送しているのか?を説明する 3つの情報 |
荷送人(SHIPPER) 荷受人(CONSIGNEE) 通知先(NOTIFY PARTY) |
② | 船積港から陸揚港もしくは中継港までを輸送する本船の名前 | 本船名(OCEAN VESSEL) |
③ | 貨物をどこで受け取り、どこに輸送するか?を示す 4つの地名 |
受取地(PLACE OF RECEIPT) 船積港(PORT OF LOADING) 陸揚港(PORT OF DISCHARGE) 引渡地(PLACE OF DELIVERY) |
④ | 輸送する貨物の詳細 | 品物の名称、荷姿、個数、容積、重量 |
券面(表面)上部と下部には、B/Lの機能(後述)を定義した約款が、裏面には運送人の責任範囲・制限と荷主の責任範囲を示した約款が記されております。券面と裏面の約款を合わせて、B/L約款と呼ばれます。
B/Lの4つの機能
B/Lには次のような4つの機能があります。
①運送人が倉庫や港で貨物を受け取ったことを示す受領証としての機能
②運送契約の内容を示した運送契約書としての機能
③B/Lの所有者が貨物の所有権を主張することができる有価証券としての機能
④荷渡し地で貨物の引き渡しを請求することができる引換証としての機能
貨物の受領や引き渡し、運送契約に関わる①②④の機能は容易に想像できるのではないでしょうか。
一方③については、電信送金やeコマースが発展したことなどにより、実務で携わる機会が少ない方も多いように思います。
B/Lの持つ特性の1つに「流通性」があります。なかなか分かりにくい部分ではありますが、B/Lの所有者がB/L原本に裏書(社名・担当者名を署名)し、商品(貨物)の代金と引き換えに次の所有者に引渡すことで、B/L原本とともに貨物の所有権を移転することが可能です。
次の所有者、次の次の所有者、次の次の次の…と、その貨物の商流に沿って所有権も移行するという性格を持ちます。
有価証券としての効力があるため、「お金と一緒だよ」と形容されることもあります。
こうした流通性を持つため、荷受人(CONSIGNEE)欄に「TO ORDER OF SHIPPER(荷送り人の指示による)」という表記が可能です。
このようなB/Lは便宜上、「オリジナルB/L」と呼ばれており、通常複数枚(3部)が発行されています。
サレンダーB/Lとは?
オリジナルB/Lでの取引は、商品代金を確実に回収したい荷送人、貨物を確実に受け取りたい荷受人双方にとって安全・確実な手段です。その流通性を活かして銀行を介した信用状取引(L/C取引)も可能です。
荷送人はオリジナルB/Lを都度荷受人に送り、荷受人は運送人にオリジナルB/Lを提示して、貨物の受け取りが可能となります。
現在のように郵便や国際宅配便などのトレースがしっかりとできあがる以前での環境では、郵送途上での紛失してしまうリスクもありました。そのリスクを考慮して、オリジナルB/Lは複数枚発行されていました。また、海上輸送の高速化にともない、関係書類よりも先に貨物が到着してしまうという逆転現象がしばしば見られるようになりました。
これらに対応するために、荷送人が運送人に対して発行されたオリジナルB/Lをすべて回収するという方法が用いられるようになりました。オリジナルB/Lの発行地で回収することから、元地回収とも呼ばれます。
元地回収を行う際は、発行されたオリジナルB/Lの全てに荷送人の裏書を行い、運送人に提出します。オリジナルB/Lが持つ有価証券として権利や一部機能を放棄することにより、到着地において荷受人はオリジナルB/Lを提示することなく貨物を受け取ることが可能となります。
元地回収は「サレンダー(SURRENDER)」と呼ばれることもありますが、権利や一部機能を放棄することから来ており、券面(表面)には大きくスタンプが捺され、一目で分かるものとなっています。また荷受人(CONSIGNEE)や通知先(NOTIFY PARTY)欄は、オリジナルB/Lと異なり、詳細を記入する必要があります。
仕出地側の荷送人にとっては郵送途上での紛失リスクを避けることができます。また仕向地側の荷受人にとっても運送人にオリジナルB/Lを提出ことなく貨物を受け取れるというメリットが大きい制度ではあります。しかし、言い方を換えてみれば、貨物の所有権を放棄して受け取りを行うという、いわば法的な空白を利用した制度であり、悪意を持った第三者が貨物を引取ることができるといったリスクも孕んでおります。
(実際には輸入通関がブレーキの役割を果たすため、悪意ある第三者が引き取ることは、実務的には困難です。しかしながら可能性はゼロではありません。)
B/Lの元地回収の扱い(サレンダー)はあくまで便宜的な取扱いであり、「サレンダーB/L」に関する条約や、法律の裏付けがあるわけではありませんので注意が必要です。
そこで生まれたSEA WAYBILL
「サレンダーB/L」の運用上のリスクや前述のコンテナ船の高速化によるに逆転現象、「船荷証券の危機」と呼ばれる状況に対応するため、新たに考案されたものがSEA WAYBILLです。国際海上輸送で発行する運送書類として、今では多くの場面で広く普及しています。
オリジナルB/Lでは4つの機能を説明しましたが、SEA WAYBILLではそのうち2つの機能を有しております。
①運送人が倉庫や港で貨物を受け取ったことを示す受領証としての機能。
②運送契約の内容を示した運送契約書としての機能。
見た目はオリジナルB/Lに近いものとなっていますが、法的に持つ意味は大きく異なります。最大の相違点は、SEA WAYBILL は有価証券ではなく流通性を有しないことです。荷受人・通知先が変わることなく固定されており、運送人はその欄に記載された相手に貨物まで輸送する義務を負います。
いわば宅配便の送り状と同義と言える効力で、荷受人(CONSIGNEE)に貨物を引き渡すという契約を証しています。従って、親子会社間やグループ会社間、長年の取引で十分な信頼関係のある会社との取引、決済済みの商品などの輸送に広く利用されています。
前述の「サレンダーB/L」と比較すると、荷送人と荷受人間での実務の上では大きな違いはありません。オリジナルB/Lの送付・提示の必要がなく、荷送人が関連書類と一緒にメール添付で仕向地に送れば、荷受人が仕向地で貨物を受け取れるのは全く同じです。が、法的な意味は大きく異なります。 「サレンダーB/L」のリスクである権利放棄を行うことなく、引渡地までの輸送が保証されます。
今まで使ってきたから…ただそれだけの理由で、「サレンダーB/L」のご指示をいただくことも多いのですが、輸送途上の安全やリスクを考えると、SEA WAYBILLの方が安心といえます。
貿易の取引条件や相手先との関係により、起用するB/Lの種類も変わってきます。信用状取引が絡めばオリジナルB/Lを使用しなければなりませんし、「サレンダーB/L」、SEA WAYBILLも目的に応じて使い分けをすることが可能です。
詳しくは当社営業担当者までお問合せください。