物流の最新情報をお届け

12
フラットラックコンテナを利用した植木の輸出【コンテナヤードへの搬入】

衣食住、様々なカテゴリーの日本文化が世界から注目を浴び、海外へ輸出される品目も日々増加しています。盆栽や植木といったカテゴリーもその一つで、EU各国をはじめ、アジア各国へ輸出されているのを報道で目にされた方も多いと思います。

今回は植木を積載したフラットラックコンテナがコンテナヤードに搬入され、岸壁に移動するまでを追いかけてみました。普段はなかなかご覧頂くことのない、特殊アタッチメントを用いた作業をご紹介いたします。動画もご用意いたしましたので、合わせてご覧ください。

植木の輸出

年間80億円前後で推移していた輸出額でしたが、2017年の126億円ピークに100億円前後での推移を辿っています。その中でも植木は中国や香港といった中華圏への輸出が多く、富裕層を中心に植木の美しさが高く評価されています。様々な品種がございますが、その中でもクロマツやイヌツゲ、キャラボク、イヌマキといった品種が評価され輸出されております。特にクロマツは縁起が良いとされており、人気が高い品種の一つとされます。

関東地方では、千葉県内に多くの輸出業者や生産業者が集中しており、例年、暑い時期を除いた10月頃から翌年の5月頃までが輸出シーズンとなります。品物の性質上、輸出相手先国での規制も多く、輸入許可書や栽培地検査、消毒といった検疫措置が求められます。規制や検査体制も変更されることが多く、最新情報の入手や仕向け地の選定などもノウハウの一つとなります。輸出に際して、防疫上の観点、また日本国内の港湾地域への輸送や海上コンテナへの積載を考慮した根巻きや線虫類などの除去を目的とした消毒措置が行われます。日新では植物の輸出入を専門にしたチームが存在し、ニーズに応えるべく日々奮闘しております。

植木をフラットラックコンテナに載せる

植木の海上コンテナ輸送は、その大きさや形状から特殊コンテナと呼ばれるオープントップコンテナやフラットラックコンテナに積載されます。枝ぶりや全体の形状が評価されるポイントの一つなので、コンテナのサイズに合わせて切りそろえるのではなく、極力それらを生かした状態で輸送されます。オープントップコンテナでは屋根を外した状態での積載が行われ、貨物が上方へはみ出したオーバーハイと呼ばれる輸送形態、フラットラックコンテナでは側方・上方へはみ出したフルボイドという輸送形態が行われています。

はみ出す枝を折り曲げる作業

はみ出すと言っても荷役機材や重量バランスの関係上限界はあるので、ロープなどで固定したり、ノミで切り込みを入れた枝を折り曲げる「枝をしぼる」という技術が用いられています。一時的に傷が付くことになりますが、現地到着後に枝を広げて暫くすると傷は完治し枯れることはないそうです。勿論、切り込みを入れる場所や深さといった技術が必要になります。

 

植木の海上コンテナへの積載は、角材の枕や脚で支えつつ、寝かせた状態で行われます。各部をベルトやロープで固定した後、最後に黒い遮光ネットを被せて完成します。植木の積み出しが多い港湾地区で見かける、黒いモコモコした物体の正体は、こうした植木を載せた特殊コンテナです。

遮光ネットで覆われた植木

特殊コンテナからはみ出た部分のスペースはボイド/Voidと呼ばれ、該当のスペースにはコンテナを積載することはありません。その為、周囲のスペースを占有することから、通常の運賃よりも高くなる要因の一つとなっています。幅がはみ出すのはオーバーワイド、高さが飛び出すのがオーバーハイ、幅も高さも飛び出すのがフルボイドと呼ばれます。

 

 

船社へのブッキング時には「オーバーハイ(高さ)〇〇cm、オーバーワイド(幅)〇〇cm」といった形で数字を連絡する必要があります。これは実際にボイドを含めたスペースの確保するのは勿論のこと、コンテナを取り扱うヤードや本船への連絡、荷役に必要となるアタッチメントの準備などに必須の項目となります。

コンテナヤードへの搬入を観察してみる

南本牧コンテナターミナルの岸壁と搬入ゲート

日新では南本牧埠頭にてSITC、SINOTRANSの中国・アジア向け航路のターミナル業務を行っており、植木を積載したフラットラックコンテナがどのような流れで搬入されるか?を追いかけてみました。通常のコンテナであれば、ヤードの出入り口にあるゲートで搬入手続を行い、指示を受けたコンテナの取り卸し場所へ向かいます。この手続は自動化されているケースが多く、ドライバーが機器を操作し行われます。

オーバーサイズのため、別経路で搬入される

他方、特殊コンテナの搬入は異なり、通常のゲートを通過することなく、専用に設けられた別の搬入口を経由してヤード構内に入ります。これは高速道路の料金所のような造りのゲートに特殊コンテナから飛び出て積載されている部分を接触させないため、また搬入時に行われるチェックを個別に受ける必要があることが主な要因です。

 

ヤードに搬入されたコンテナはゲート付近で一旦停車し、積み付けのチェックを受けます。特殊コンテナの積み付けは、安全な輸送を目的として各船社毎に積み付け基準が設けられています。具体的には幅や高さの飛び出し状況が、テナーやガントリークレーン荷役が行える状態にあるのか?また貨物を留めているベルトなどに緩みがないか?等、安全に荷役、輸送が出来る状態かどうかをチェックする行程です。ヤードの担当者がコンテナの周囲を見回りながら、一つ一つチェックを行います。この工程を経て、漸く搬入が可能となります。

植木を固定したベルトを一つずつチェックする チェックが終わり、搬入受付の手続を行う

特殊コンテナは周囲が飛び出ているため、通常のコンテナの様に隣接して留置したり段積みが出来ない状態が多く、専用のスペースに保管されます。その為、予めヤードと打ち合わせた指定時間に搬入する必要があります。また構内移動が複数回に渡ると破損・事故リスクも増大するため、本船が発着する岸壁のすぐ脇といった場所として割り当てられ、「船側渡し」と呼ばれる形で受け渡しが行われるのも特殊コンテナ荷役の特徴となります。

本船到着まで一時的に岸壁の専用スペースに留置されるフラットラックコンテナ

今回の植木を積載したコンテナは事前にトレーラーから下ろして一旦ヤード内での留置が行われましたが、貨物のサイズや重量、またターミナルにある荷役機器の都合により、ヘッドを切り離したトレーラーごと岸壁で留置し、本船荷役を待つケースもございます。当然トレーラーを専有する時間が長くなるため、費用も嵩むことになります。

コンテナヤードで運用されているテナークレーン、ガントリークレーンではコンテナ上面にスプレッダー(コンテナを固定する部分)が密着して荷役が行われるため、高さが飛び出た(オーバーハイ)貨物を積載したコンテナをそのまま荷役することは出来ません。その為に四つ足の机のような形状のアタッチメントを用いて荷役を行います。足の高さは機器により多少異なりますが、取材時に使用されたものは180cmの高さがあり、その範囲内であれば取扱いが可能となっています。

通常のスプレッダーは操縦室から遠隔操作でツイストロックのロック/アンロックを行うことが出来ますが、このアタッチメントでは四つ足の先についたツイストロックを端面のテコに繋がれた紐を作業員が引くことで手動操作を行います。

アタッチメント(黄色い部分)を用いて作業が行われる

このような流れで搬入された特殊コンテナは一旦岸壁に留置され、当該本船の到着を待ちます。日新ではオープントップ、フラットラックといった特殊コンテナを用いた輸送に力を入れており、特に今回取材を行った横浜地区では、貨物の梱包や特殊コンテナへの積載作業から海上輸送輸送まで、大型物・重量物の輸送をトータルでサポートが可能です。今回ご紹介しました植木のみならず、機械や工場設備、車両など、取り扱い実績も豊富で、品物に合ったベストな輸送方法をご提案いたします。

 


RELATED ARTICLES関連記事