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まるで開拓者!キルギス向けコンテナ輸送

『中央アジア地域への輸送に強い日新』――古くからそのイメージを持たれることが多く、現在でも多くのご相談をいただいております。

今回のプロジェクトも、キルギスでの公共工事のODA(政府開発援助)に参加しているお客様より、輸送面で相談にのってもらいたいとのお話から始まりました。

机上での輸送ルート確認

ODA(政府開発援助)はその名のとおり、「開発途上地域の開発を主たる目的とする政府および政府関係機関による国際協力活動」のことです。開発途上地域への支援・援助にかかわる事業に関連した輸送となれば、まずは安全な輸送ルートを確保する必要性があります。

中国とも国境を接するキルギスは、カザフスタンの南西に位置し国土は日本の約半分ほど。
さして大きくはない国土ながら、その40%は3,000m以上の険しい山脈が続く地帯に囲まれています。平時であればウラジオストクまでの海上輸送の後、シベリア鉄道を経由してカザフスタン~キルギスの首都ビシュケクまで接続が可能でしたが、混迷した現在ではそのルートを採ることはむずかしく、中国とカザフスタンを経由するルートが候補として挙がりました。

近年、欧州への連絡ルートとして注目を浴びる中国鉄道の輸送ルート「中亜班列(Trans Asia Caucasus Land Bridge)」は、中国政府肝いりでスタートしたもので、連雲港を起点に中国を横断し、西安・烏魯木斉(ウルムチ)を経由して国境のホルゴス(コルガス)まで約3,800km。ホルゴスから先、カザフスタン国境を通過し、アルマトイを経由してカスピ海・黒海を介し欧州各国へと続きます。

その重要ルートの途上、カザフスタン・アルマトイの先で鉄道は分岐し、目的地のキルギス・ビシュケクへ接続。本プロジェクトの担当者は、過去にもそのルートを調査したことがあり、このルートなら多くの資材・機材をコンテナのままで輸送できると判断し、中国側の担当者へ連絡。混雑状況を確認しつつブッキング交渉を開始するも中国側の回答は「連雲港の鉄道接続が大混雑している。現時点で3~4カ月滞留しており、回避策が見当たらない」とまともに話を聞いてもらえない状態が続きました。
しかしながら、キルギスへ持ち込むルートが他にはなく粘り強く交渉を続けた結果、輸送手配がかないました。

日本からキルギスへ ~大型・重量物の輸出~

YHPCでバンニングされる貨物

第1便となるコンテナは11本。
現地で調達できる資材がほとんどないため、コンテナ内は工事に用いる様々な資材が目一杯詰め込まれています。横浜から中国・連雲港への海上輸送は問題ないものの、連雲港での鉄道接続は未だ改善の兆しが見えない状態での輸送は、当初3~4カ月くらいかかると予想されていましたが、実際には1カ月掛からずに列車にのせることができ関係者一同安堵しました。

第2便においても同様の手配で進められると準備をしていたところ、一部コンテナに入らない重機部品がリストアップされていることが判明。コンテナに積めない貨物は、在来船と中国国内をトレーラーで横断する以外に輸送方法がないため、すぐさま中国側担当者へ確認を行います。中国側からも「トレーラーをそのままキルギスまで直行させることはできないが、中国とキルギスの国境で積み替えることで目的地までの輸送が可能」だと回答があり、早速手配を行いました。

プロジェクトの担当者は、第1便の時と同じく第2便についても横浜重量物梱包センター(=YHPC)でのバンニングや梱包作業に立ち会います。輸送する貨物の状態や数量に間違いがないか入念にチェックを行った後、ようやく貨物は輸出されます。

トレーラーで輸送される重機

再びのご相談…キルギスから日本へ使用した重機等を戻したい!

いざ、キルギスへ! 現地調査で輸送ルートを確認

「持ち込んだ資材は現地で消費されているが、建設機械や重機は日本へ返送する必要がある」そんな輸送の相談が入ったのは第2便の手配が終わりつつある頃でした。輸送ルートはある程度想像ができるものの、ここで問題となってくるのが品物をコンテナに積みつける行程です。単にコンテナに入れれば終わりではなく、分解した重機やその部品類を梱包する、果たしてそのような手配がキルギスで可能なのか?まずは、ここを解消する作業から始まりました。

キルギスは農業国であり、農産物や織物を輸出することはあっても、日本のように機械を輸出することはほぼないのが実態です。輸出梱包はもちろん、今回のような重機や部品といった大型・重量品という作業には縁遠いため、現地の代理店に問合わせてみたところ、案の定対応はむずかしいという返答が入ります。そこで中央アジア地区に展開する別の代理店を探し出し、作業工程を確認することになりました。

その代理店は鉄道駅に隣接した作業倉庫を持ち、貧弱ではあるものの最低限の設備は整っていましたが、キルギス・ビシュケクの輸送環境、また公共工事が行われる現場までは8時間近く要する状況など、現地の代理店に話を聞くだけでは不安が残ります。
そこでプロジェクト担当者は現地調査をするべく、イスタンブールを経由し首都・ビシュケクまで32時間のフライトで向かいました。

現地へ到着すると、担当者2名は翌朝から早速調査に取り掛かかります。
中央アジア各地に拠点を置くフォワーダーを代理店として、その担当者の案内で各所を巡り、ビシュケク国内輸送の拠点となる鉄道駅に赴きました。ビシュケク1駅と呼ばれる駅には、貨物扱い用の取り卸しには十分なスペースがあり、作業用のフォークリフトや輸送用のトレーラーなども必要数を確保できる見通しが立ちます。作業担当者にも直接面会し、その作業内容や指示を説明する等、一つ一つ共有していきます。

何をリクエストしても問題はない、作業は可能だと応える、そんな姿にいささか不安を覚えつつ、実際の工事現場へ8時間かけてルート確認へ向かいます。カザフスタンとキルギスを結ぶ重要な幹線道路であり大型車両も走行可能とはいえ、けして広いとはいえない道幅や、標高3,500mの峠を越える箇所が見られます。また、遊牧民も多い地域なため、ときとして道路を一時的に塞いでしまうほどの羊に苦慮しながら、目的地へ到着しました。

キルギス北西部を貫くタラスータラズ道路が作業現場です。
旧ソビエト連邦時代に整備されたキルギスの道路交通は、独立後に保守作業が追い付かず、老朽化して危険な箇所が目立ちます。隣国との交易路としても重要な交通路であり、万が一寸断されてしまえば、険しい山中で孤立してしまうため、一刻も早く改修する必要があると改めて実感し、早急にプロジェクトを進めるべく帰路に立ちました。

作業現場では、橋脚の一部が傾いている箇所などもあり早急な作業が求められていた

要となる工程表

ビシュケクより帰国すると、早速見積書の作成に取り掛かります。
机上でメールや電話などを使用しただけではわからなかった部分と疑問に感じていた部分や輸送にかかるコストなどは実際に現地へ足を運び、確認を行うことで状況をクリアに見ることができます。

こうしたプロジェクトや大型物の輸送は見積書だけでなく、工程表が重要となります。
単に金額を列記しただけではなく、国境での通関手配や保税転送の手続といった法令に関すること、またどのような機材を用いて、どのような取扱いを行うのか。という見えにくい部分を可視化することを常に意識しながら作成しています。その結果、見積書と工程表が評価を受けて、第3便のビシュケクから横浜までの輸入案件を受注いたしました。

現地でのバンニング立会い

トラブル発生 ~それ、梱包ではありません!~

ビシュケクからの輸出通関サポートおよび貨物のバンニング、トラックへの積込み立ち合いのため再びキルギスへ。前回の現地調査から約1カ月、季節は冬になりマイナス10℃の気温の中、作業工程の確認を行います。

現地でも大きな物量の貨物を取り扱うのは珍しく一大イベントのような盛り上がりを見せる中、悪路を8時間弱走破した重機とその部品等が続々と鉄道駅へ到着。駅長からのご厚意により駅構内を貨物置場として提供してもらいしばらくの間ここに滞在して、梱包やバンニング作業の立会いを行います。

チェックリストと現物を照合しながら搬入の確認を行うと、予定された順番の通りに送られてきており、作業の進捗はスムーズに進むと思われた矢先、トラブルが発生しました。

コンテナにバン詰めされる重機

梱包する様子がないまま到着した重機や部品類を次々とコンテナに載せ替える作業員たちの様子に思わずストップの声を掛けます。
「梱包はどうするんだ?」という質問に対し、作業員たちは「コンテナの内部で行うから問題ない」と口を揃えます。よくよく話をきくと彼らが梱包として認識していたのはラッシング、ショアリングといった貨物を固定する作業であり品物を保護するための梱包でないことが判明。必死に梱包について説明を行います。

手元を見ても限られた資材や機材しかなく、それらを用いて最低限の梱包を施すよう作業監督に指示を伝えます。プロジェクト担当者は身振り手振りで指導しながらショアリングを行うものの日本で行っている作業と比べると雲泥の差。少しでもダメージを抑えたいという一心で自ら陣頭指揮を取り、バンニングを進めます。ときには日本語で大きな声を出して注意する場面もありつつ、ショアリングの指導やバンニングの確認を滞在期間すべてを使い、何とかバンニングを終えることができました。

コンテナに入らない重機はトレーラーで輸送

コンテナに入らない部品については往路と同様に数千キロをトレーラーでの輸送となります。天山山脈やゴビ砂漠を抜け中国を横断し、黄海や東シナ海まで繋がる輸送ルートは車両の直通はできないため国境の街、ホルゴスで貨物の載せ替えを行うことが必要となります。どうしても目が届きにくい行程ではありますが、担当者は事前に手配を行う中国のパートナーにホルゴスの状況を確認。中国との物流ルートの一つとして重用され日々多くの車両が行き来しているホルゴスでは、中国国内を走行する車両はもちろんのこと載せ替えのための重機や施設も整備されており、実績も十分にあることが確認できました。

日本へ戻ってからも、日々各所の代理店やパートナーと連絡を取り貨物の進捗状況の確認を行います。特に気になっていた大型・重量品のホルゴスでの載せ替えも問題なく作業が終わり、トレーラーが走り出したと聞いたときにようやく肩の荷が下りたような気持ちになりました。

現地からの到着貨物を確認

到着した貨物のデバンニング作業

キルギスでの輸出作業から約5カ月経ち、横浜に貨物が続々と到着する中、担当者は横浜重量物梱包センターにて、その一つ一つに立ち会いチェックを重ねます。

梱包とは到底いえないような状態で積載せざるを得なかった貨物についても、ダメージはなく無事品物を戻せたことを実感すると、すぐさまお客様に連絡を入れ、倉庫への配送日の調整を行う最終工程に取り掛かかります。

ODAの業務は長く、4便目となるキルギスへの新たな資材輸出の話が舞い込みます。現在も連雲港の混雑の状況は変わっておらず、別ルートでの輸送を行うことになります。
同じ輸出先であっても貨物の形状や物量、混雑状況等に合わせてルートの変更や提案行う、そんな日新の輸送サービスについて一度問合せをしてみませんか。

動画でみるキルギスプロジェクト

こちらのプロジェクトの一連の流れを動画にまとめてみました。

なお、本動画には走行中の車内から撮影しているパートが含まれるため一部画像の乱れがございます。
視聴の際はその旨ご注意願います。