フラットラックコンテナの荷役
通常のドライコンテナは、カット日までにコンテナヤードに搬入されると保管スペースに移動し、一時的に留置され、本船の到着を待ちます。本船が到着すると指定された順番に従って岸壁に移動し、ガントリークレーンで本船へ積み込まれます。
他方、特殊コンテナと呼ばれるオープントップコンテナやフラットラックコンテナは、オーバーサイズ(コンテナからはみ出るサイズ)の品物を積載することが多くあります。ドライコンテナのように段積みをしたり、隣接して置くことが出来ないため、専用スペースに留置されます。コンテナの搬入を受け付けるタイミングもコンテナヤード側のスペースや機材の都合や、積載されている品物のサイズにより変わります。事前搬入が可能な場合は、ドライコンテナと同じくコンテナヤード内で一時留置された後に荷役となりますが、ヘッドを切り離してトレーラーごと預かり荷役となるケース、また本船の入港に合わせて時間指定で船側まで持ち込みを求められるケースなどがあります。本船の入港が遅れれば荷役スケジュールも変わりますので、昼間の予定が急遽夜間の荷役に変更となり、トレーラーの待機料が発生してしまうケースなども想定されます。この辺りは船会社やフォワーダー、乙仲などの起用業者に事前に確認を行い、特に荷役日は密に連絡が取れる体制を取ることをお勧めいたします。
本船荷役までの待機方法 3パターン
![]() |
![]() |
![]() |
コンテナヤードにて留置 | 低床トレーラーに載せられ待機 | 船側にて待機 |
コンテナターミナルで荷役を行うのは、テナークレーンやガントリークレーンですが、スプレッダーと呼ばれる吊具を介して行われます。コンテナとの固定は四隅にあるツイストロックで行われますが、天井部分に密着するため、オーバーサイズの貨物を積載したコンテナをそのまま取り扱うことは出来ません。その為に特殊なアタッチメントを取り付けて荷役を行います。取材時にはオーバーハイ・180cmまで対応可能なアタッチメントが用いられていましたが、コンテナヤードにより対応可能なサイズは異なりますので、積載予定のコンテナの取扱が可能か否か、ブッキング時に運行船社への連絡・確認が必要となります。
コンテナターミナルでの作業

南本牧コンテナターミナルで荷役中の SITC JIANGSU
荷役は南本牧コンテナターミナルにて行われました。2015年に供用を開始し、水深18m、岸壁長さ480mと最大2万TEUの本船にも対応出来る、世界最大級のコンテナターミナルの一つです。取材当日入港していたのはSITC JIANGSU。SITC社が保有する約1,800TEU積載可能なコンテナ船で、日本と中国、ベトナム、タイなどの東南アジアを結ぶ航路に投入されています。荷役作業には、24列・9段まで対応出来る最大級のガントリークレーン2基で行われました。
取材時には40f フラットラックコンテナ2本が荷役を待っておりました。こちらは船側受けとなるので、トレーラーがヘッドを繋げた状態で岸壁に待機して、作業順を待って作業が行われました。荷役に先立ち、前述の専用アタッチメントがトレーラーで搬入され、スプレッダーに取り付けられます。

専用のアタッチメントがスプレッダーに取り付けられる
スプレッダーへの取付が終わると一旦巻き上げられ上空で待機、その間にフラットラックコンテナを載せたトレーラーが呼ばれます。スプレッダーを下ろした際に多少の調整は行えるもののトレーラーが停止する位置は重要で、地上作業員の的確な指示の下、所定位置に慎重に停車しました。

アタッチメントを介してフラットラックコンテナがロックされる
通常のドライコンテナであれば、直ぐに吊り上げが開始されますが、オーバーサイズのコンテナを取り扱う時は特に慎重で、係員が各部のアタッチメントとの接続を確認しながら吊り上げられます。地上作業員とガントリークレーンのオペレーターは無線やスピーカーを用いて連携しています。

吊り上げられるフラットラックコンテナ
一連の作業を動画でご覧いただけます!
ガントリークレーンからの目線

この姿がキリンと呼ばれる所以
コンテナを取り扱う岸壁には必ず設置されているガントリークレーン。アームを上げたその姿からキリンと呼ばれることもあります。南本牧埠頭に設置されたガントリークレーンは最大級のもので、高さはビル20階程度に相当するの地上約50m。2万TEU級の本船の24列・9段まで対応が可能となっています。外観からも分かる通り、階段も設置されていますが、通常は脚の内部にあるエレベーターで操縦席に上がります。操作にはクレーン・デリック運転士免許という国家資格が必要となります。
1時間当たり平均で30~40本程度のコンテナを取り扱い、コンテナ1本当たり1分半から2分程度の作業時間となります。地上側、本船上の作業員との連携は勿論、集中力と上下、前後左右といった空間把握力が求められます。その為、原則勤務は2時間交代とされています。取材時には左手で前後方向、右手で巻き上げ等の操作を行っていましたが、ガントリークレーンの製造メーカーに因っては逆になることもあり、通常より注意や集中を求められるケースもあるそうです。
本船上の積載位置

ガントリークレーンの操縦室から本船上を見る
吊り上げられたコンテナは、慎重に海側へ前進し、本船上の所定位置に移動します。特にフラットラックコンテナでは、品物が露出している関係上、ハッチ下となる船倉内への積載をリクエストされるケースもありますが、コンテナを所定位置に誘導するためのガイド(セルガイド)への接触や隣接するコンテナ、スペースの関係上、デッキ上(オンデッキ)に積載されることも少なくありません。当該本船のスペース状況や作業順、また積載されている貨物の状態により、運行船社によって本船上の積載位置は決定されます。このような積載条件が想定されるため、防水対策が施された梱包が求められます。
日新ではオープントップコンテナやフラットラックコンテナを用いた、オーバーサイズの貨物に特化したサービスをご提供しています。創業の地、横浜では地域最大級の天井クレーンやフォークリフトで梱包からバンニングまで横浜重量物梱包センターにて一貫した手配が可能です。中国や東南アジア、インド方面へ広いネットワークを誇るSITC社の集荷代理店として、また自社ネットワークで世界各地を結ぶNVOCCサービスの豊富な海上輸送サービスのメニューで様々な船積のニーズにお応えしております。
今回ご紹介いたしました横浜港・南本牧埠頭をはじめ、大阪港・夢洲コンテナターミナル、堺泉北港、神戸港・ポートアイランドでは、ターミナル業務を展開し、海上輸送を影ながら支えております。