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タンクコンテナ輸送の舞台裏—名港デポを徹底解剖

液体や気体を安全に輸送するための「タンクコンテナ」。日新ではオランダのデン・ハートフ社と提携し、世界各地への海上輸送サービスをご提供しております。過去にも本Navigationにてタンクコンテナの詳細や、メンテナンス作業の最前線をご紹介させていただきました。普段は目にすることの少ないタンクコンテナのオペレーション。今回は、お客様からのリクエストにお応えして、名古屋港にある広大な専用施設で開催した見学会の様子をご紹介します。

タンクデポとは?

化学薬品をはじめとする液体やさまざまなガスを輸送するために生まれたタンクコンテナ。その外観や形状はもちろん、オペレーション面でも通常のドライコンテナとは大きく異なります。

デン・ハートフ社が所有する T-11 タンクコンテナ

通常のドライコンテナは、運行船社(またはコンテナリース会社)が所有し、寄港地に設置されたコンテナヤードで搬出入、保管、清掃、修繕などのメンテナンス作業を行います。一方、タンクコンテナは運行船社の所有ではなく、デン・ハートフ社のようなタンクコンテナを専門に運行・管理する会社があり、運行船社から本船上のスペースを借り受けて各地へ海上輸送されます。

タンクコンテナはその積載される品物の性質上、通常のドライコンテナのように、港湾のコンテナヤードで管理することができないため、専用施設で使用後の洗浄や定期検査、修繕が行われます。これが「タンクデポ」と呼ばれる施設で、化学品の取扱が多い港湾地区の近くに設置されています。タンクデポでは、専門的な設備と高度な技術を駆使し、タンクコンテナが次の輸送に備えられるよう万全のメンテナンスが行われています。

今回は、名港海運様の「名港タンクデポ」にて、デン・ハートフ社のタンクコンテナサービスを御利用のお客様を招き、見学会を開催いたしました。お客様には施設の広大な敷地や清掃工程、検査設備を間近でご覧いただきました。

名港タンクデポ 俯瞰図(名港海運様提供)

名港タンクデポ

年々高まるタンクコンテナの輸送ニーズに応えるため、2023年にオープンしたのが名港タンクコンテナデポです。地域最大級の敷地面積を誇り、最新の設備が整ったパブリック・タンクコンテナデポとなります。名古屋港と四日市港の中間に位置しており、伊勢湾岸自動車道の弥富木曽岬ICが最寄りとなります。この立地により、東海だけでなく関西、北陸、信越などの他地域からのアクセスが容易になっています。

このデポでは、タンクコンテナやタンクローリーのメンテナンス作業が一貫して行われています。保管から洗浄、検査、修理、メンテナンスまで、全てをワンストップで可能にしています。

名港デポ施設の詳細とその機能

チェックゲート
ゲートを入るとまず目に飛び込んでくるのがチェックゲート。タンクコンテナの搬入時、最初に利用される施設です。外部の状態を確認するための場所であり、タンクコンテナの上部にアクセスできる階段を備えています。各部の状態もしっかりとチェックすることで、次の工程で不具合が発覚するリスクを低減し、スムーズな運用を実現しています。

チェックゲート周辺

また隣接して円形の島があり、外部からの車両はその周囲を時計廻りに走行するルールとなっています。これにより外部からの車両の立ち入りエリアが限定されるため、安全な導線確保、また効率的な荷役を行うことが可能となっています。

洗浄棟

自動洗浄装置が設置されている洗浄棟

洗浄棟には、自動洗浄設備が4レーン設置されています。この設備では、タンクコンテナの内部に高圧洗浄機を挿入し、薬剤を使用した洗浄が行われます。1日最大16基のタンクコンテナの洗浄が可能で、旺盛なタンクコンテナの輸送ニーズを支えるのに十分な能力を持っています。また自動化された洗浄工程は、効率的であるだけでなく、作業者の安全性も向上させています。

一度に複数の洗浄が可能 マンホールに高圧洗浄機のノズルを入れる 構内では専用の架台に載せて移動する

メンテナンス棟
洗浄棟に隣接してメンテナンス棟が設置されています。タンクコンテナの洗浄時にはバルブなどの部品を一旦取り外し、分解・洗浄する必要があります。取り外されたバルブ類を持ち込み、この施設で各種作業を行います。洗浄に際して有機溶剤を多用するため、有害物質や臭気の拡散を防ぐ局所排気装置付きのシンクを完備し、安全・環境面の配慮も整っています。パッキン類の交換や金属部品の研磨といった精密なメンテナンス作業もこの施設内で行われます。

作業は全て屋内で行われる バルブのメンテナンス作業台 タンクコンテナから外したバルブ類が並ぶ

加温設備
タンクコンテナに充填される品物は水のような完全な液体もあれば、常温では粘度が高くなってしまい、荷役が難しくなってしまう性質のものもあります。品物の粘度を下げため、タンクコンテナに設置された蒸気管に蒸気を通し、加温することが必要となります。この施設では、最大6基のタンクコンテナを同時に加温することが可能です。加温は効率的に行われるだけでなく、温度管理も厳密に行われるため、貨物の品質を損なう心配がありません。

デン・ハートフのタンクコンテナが加温中 ラックから伸びる蒸気管 タンクコンテナに接続し加温する

検査棟

高い屋根が特徴の検査棟

タンクコンテナは安全性の確保のため、さまざまな検査を必要とします。例えばある品物を輸送した後、別の品物が充填される際には内部やバルブ類を完全に洗浄する必要があります。作業完了後には、第三者機関が発行する「洗浄証明書」が発行されますが、タンクコンテナ内部に人が入り、確認作業が行われます。万が一落とし切れない汚れが発見された場合には、個別に人の手による研磨や洗浄作業が行われます。このような運用毎に必要となる検査作業の他、2年半毎に行われる気密検査や、5年毎 に行われる水圧検査など、法的要件を満たすための検査体制が整い、各種作業が行われるのが検査棟です。

搬出を前にデン・ハートフのタンクコンテナが並ぶ ハシゴを入れて、内部に入る 周囲にアクセス用通路を設置

修理棟

修理棟内部と作業中のタンクコンテナ

修理棟では、タンクコンテナの修繕や改造を専門に行います。この施設には、天井クレーン、塗装ブースといった修繕機材の他、金属加工に必要となるプレス機、シャーリング機、溶接機など、多彩な設備が揃っています。これにより、軽微な修理から大規模な改造まで幅広く対応可能です。

デポエリア

最大690基のタンクコンテナを保管可能

タンクコンテナの保管を行う場所をデポエリアと呼びます。空コンテナであれば最大690基を保管可能な広大なスペースが広がります。品物が充填されたタンクコンテナ、実入りの状態での保管にも対応しており、危険物タンクは24基、毒劇物は6基まで保管できる専用エリアが設けられています。また、タンクローリーの一時保管にも対応しており、多様なニーズに応えています。

タンクコンテナデポ 見学会

タンクコンテナ輸送の現場を間近で見る貴重な機会として、5月13日に名港タンクコンテナデポの見学会を開催しました。今回の見学会は、お客様からのリクエストを受けて実現したもので、名港海運様にもご協力をいただきました。デンハートフのサービスをご利用いただいているお客様5名にご参加いただき、タンクコンテナ輸送の基礎知識や施設の概要について学んでいただくとともに、実際の現場を見学していただきました。

タンクコンテナの基礎講座 チェックゲートから構内を見学 バルブ類の説明に聞き入る

日新では、お客様に輸送技術や現場を直接ご覧いただき、日常業務に活用していただける見学会を実施しております。詳細は、弊社営業担当までお気軽にお問い合わせください。

 

取材協力:名港海運株式会社  名港タンクデポ https://www.meiko-trans.co.jp

 

 

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