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物流のDX化

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2023.04.27

DXはデジタルトランスフォーメーションの略称で、企業がデータやデジタル技術を活用してビジネスモデルや企業風土・組織、サービスを変革することを指します。

 

2025年の崖とは

このDXという言葉が広く知られるようになったことの一つに「2025年の崖」があります。
「2025年の崖」は、経済産業省が2018年9月に発表した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』に記された言葉で、既存システムの老朽化やIT人材の不足等が取り上げられており、2025年までにDX化が実現できない場合最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性があると書かれています。

2020年には、ポストコロナの時代として「新たな日常」を実現するための原動力としてのDXが明確に位置付けられ、日本国内で遅れていたDXを強力に推進する機運が生まれました。これらは物流分野においても例外ではありません。そんな物流分野、特に国際物流におけるDXについて、従来の物流と比較しつつご紹介してまいります。

従来の国際物流

国際物流とは…かんたんに言えば、国と国との間でのモノのやり取りです。
国と国=海外とのモノ=商品のやり取りには、言葉の違いや商習慣の違いが存在しており、また商品を運ぶ手段についても海上や航空と合わせて鉄道やトラックという陸路での輸送のパターンがあります。
上記のやり取りに合わせて必要な書類が数多くあり、その書類のやり取りの多くがPDFを使ったメールやFAXでの紙を主としたやりとりになっているのが現状です。

■国際輸送の大まかな工程
・船/飛行機の予約(S.I, Booking Confirmation)
・貨物のピックアップ(必要な場合)
・貨物の梱包(必要な場合)
・貨物の重量の申告(VGM)
・貨物の事前申告(AFR/AMS)
・輸出申告(通関、C/O)
・海上・航空輸送(B/L、AWB)
・貨物の到着案内(A/N)
・輸入申告(輸入通関)
・税金等諸費用の支払い
・貨物を港でピックアップ
・配送完了

■輸出者から輸入者まで貨物が海上輸送で届く流れ

国際物流に必要なおおまかな書類

INVOICE 送り状・仕入書 輸出者が作成する書類で、貨物の送り状。
インボイスの記載情報には、輸出入者の氏名や住所、価格や決済条件、商品の明細や輸送に用いる本船・仕向港など船積みに関する主要事項がすべて含まれている。輸入者にとっては仕入書となる。
P/L(=Packing List) 梱包明細書 輸出者が作成する書類で、梱包ごとの貨物明細が詳しく記載されている書類。どの梱包にどの商品がどれだけ入っているか書類をみるとわかるようになっている
S/I(=Shipping Instruciton) 船積み指図書 輸出者が海貨・通関業者宛てに出す指示書のことで、輸出通関や船積みに必要な情報がまとめてある
委任状 通関業者に初めて依頼するときに必要となる書類
B/L(=Bill of Loaing) 船荷証券 荷主(輸出者)と運送人(船会社)がとの間で運送契約を結んだことを証明する証拠書類として、運送人が荷主の貨物を受け取ったときに発行される。
表面には、荷主、受荷主、貨物の受取場所、引き渡しが場所が記載され、裏面には船会社が輸送を引き受ける条件が記されており運送契約書としての機能を持っている。
各種証明書 輸出貿易管理令の非該当証明、海上輸送で必要になる船籍証明、原産地証明、衛生証明、動物検疫、植物検疫といった取り扱い貨物によって必要となる証明書
Insurance Policy 保険証券(貨物海上保険) 損害保険会社が保険契約者あてに発行する保険契約の確認書。表面に保険の引受条件や船積み情報が記載されおり、裏面には保険約款が記載されている。

上記のように、国際物流では輸出者から輸入者に貨物が届くまでの間に、税関・フォワーダー・通関業者・倉庫・銀行・保険会社等様々なプレイヤ―と様々な書類が関係してきます。
この複雑な関係各所とのやり取りとそれにかかわる書類を統一化し、プラットフォーム(サイバーポート・トレードワルツ)にまとめ、簡素化していくというのがこの後に続く国際物流のDXとなります。

物流のDX化とは

国土交通省によれば物流DXとは、「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること(物流DXにより他産業に対する物流の優位性を高めるとともに、我が国産業の国際競争力の強化につなげる)」と定義されています。

具体的には、
■既存のオペレーション改善・働き方改革を実現
■物流システムの規格化などを通じ物流産業のビジネスモデルそのものを革新

サプライチェーン全体での機械化・デジタル化により、情報・コスト等を「見える化」、作業プロセスを単純化・定常化し業務を効率化していくというものです。

官民をつなぐ港湾物流のDX化「サイバーポート」

サイバーポートとは

民間事業者間のコンテナ物流手続きを電子化・共通化することで業務を効率化し、生産性の向上を実現するデータプラットフォームです。

国際物流の現場である港湾物流では、依然として業務の大半の手続が紙を使ったFAXや電話、個別のメールなどで行われています。サイバーポートは、これらの書類の作成や送信、データ取得、再入力や電話問い合わせなどに要する時間を削減し、事業者間での異なる書類様式、入力項目、接続方法を統一して効率化するためのプラットフォームです。

現在の事業所間の情報伝達イメージとCyber Portを活用情報伝達イメージ (※Cyber Portセミナー資料をもとに作成)

サイバーポートを利用することで、物流手続きにかかわる時間を最大60%削減できることが実証事業で確認されております。

また、2023年3月に電子手続きによる輸出入の申告システム(NACCS)との連携が発表されており、船積み依頼書(S/I)記載のデータの一部を貨物情報登録(ECR)として自動連携されるなど、入力にかかわる時間が今後さらに削減されるようになります。

港湾にかかわる「モノ」の流れをDX化することを目的としているため、9つの事業者(荷主、船社(外航・内航)、NVOCC/フォワーダー、海貨業者、通関業者、ターミナルオペレーター、陸運業者、倉庫業者、船舶代理店)に利用が展開されております。

貿易にかかわるすべての人をつなぐ貿易実務全般のDX化「トレードワルツ」

トレードワルツとは

2017年にNTTデータが事務局を務め、荷主・銀行・保険・物流といった貿易業務に携わる各業界のリーディングカンパニー18社が集結し、貿易にまつわる様々な課題解決を目的に発足した貿易コンソーシアムに始まります。

経済産業省の外郭団体であるNEDOの支援も受けて実証実験・試行・運用を重ね、2020年4月に、貿易手続きの完全電子化を目指す業界横断の貿易情報連携プラットフォーム「TradeWaltz®」の開発・運営・事業化を目的とした、「株式会社トレードワルツ」が設立されました。

トレードワルツサービスの特徴 (出典:トレードワルツ社の会社案内)

初期機能としてL/C(信用状)通知機能のリリースから始まり、2022年4月には輸出・輸入の船積書類のデータ連携機能がリリースされています。

トレードワルツでは、NACCSやCyber Port等の国が主導するプラットフォームとの連携に止まらず、貿易に関係する様々なサービスとも協業し、システム連携を通じて貿易エコシステムの形成を進めています。

今後は、船会社プラットフォームとの連携によるオンラインブッキングやトレース機能、原産地証明書や貨物保険のオンライン申請機能の追加などが予定されています。

また、日本のみならず、アジアをはじめ各国の貿易プラットフォームとの連携・標準化を進め、「世界の B2B 情報ハブ」として新しい貿易の未来をつくるサービスを目指しています。

当社、株式会社日新は、貿易実務の電子化だけにとどまらず、貿易プロセスの変革まで踏み込んだ貿易プラットフォームを目指すトレードワルツに賛同し、2021年8月にトレードワルツに出資・参画いたしました。当社の国際物流の知見と経験を活かし、トレードワルツを通じて国際物流DXに貢献し、荷主に分かりやすく、よりスピーティーな国際物流サービスの提供を目指して活動しております。

フォワーダーのサービスをオンラインで「デジタルフォワーディング」

デジタルフォワーディングとは、フォワーダーが荷主様へ向けてオンライン上で提供するサービスの総称です。
運賃や作業費の見積、Booking依頼や出荷後のトレース状況などを、全てポータルサイト上で確認できることが大きな特徴になります。

他業界の変革事例として、店舗型の旅行代理店が対面で提供していたサービスがオンライントラベルエージェントに置き換わり、顧客がオンライン上で簡単に航空券の価格比較やホテルのブッキングまで可能になった流れに近いといえるかもしれません。
海外ではFlexport社を始めとする多くのデジタルフォワーダーが創業していますが、ここ数年では国内フォワーダー各社もオンラインサービスサイトを立ち上げ始めています。

基本的な特徴は「荷主様とフォワーダーのやり取りのオンライン化・一貫輸送サービスのオンライン提供」ですが、今後はフォワーダー各社がそれぞれの強みや特色をオンラインサイトでいかに打ち出していくか注目されます。

当社でも、デジタルフォワーディングサービス「Forward ONE」を立ち上げ、2023年3月27日よりにリニューアル版の第1弾をリリースいたしました。一次機能として「見積、スケジュール、Booking」までを提供し、二次機能では「トラッキング、書類の授受」までの一貫機能を提供する予定です。
今後は国際物流DXの流れを見据えながら、従来にない新たな機能を追加し、様々なパートナー企業が持つDXサービスとの連携も検討しております。

フォワーディングのDXを通じ、よりスピーディーで効率的な国際物流の実現を目指してまいりたいと思っております。

 

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