この記事はこんな方におすすめ
✔ CEIV リチウムバッテリーについて知りたい方
✔ CEIVについて知りたい方
✔ リチウム電池を航空輸送する際の品質管理に興味がある方
✔ リチウム電池の取扱いに詳しい、フォワーダーを探している方
CEIVリチウムバッテリーとは
リチウム電池は、不適切な取扱いにより発火の危険性があるため、サプライチェーン全体で安全な取扱いと輸送を行うための国際基準が定められています。
CEIVリチウムバッテリーは、その専門性と品質管理レベルの向上を目的とした国際航空輸送業界の認定プログラムです。
本認定は危険品に分類されるリチウム電池の「輸送」「保管」が、厳正な基準のもと、高い安全性と優れた品質で提供されていることを証する制度となります。
CEIVとは
CEIVとは”The Center of Excellence for Independent Validators”の頭文字を取った略語で、
IATA(※)が策定した特殊航空貨物の国際品質認証です。その認証は4つに分類されます。
Lithium Batteries:リチウム電池
Pharma:医薬品
Live Animal:家畜・動物
Fresh:生鮮品
本認証は、荷送人、フォワーダー、貨物ターミナル・オペレーター、航空会社が取得可能です。
※IATA…International Air Transport Association 国際航空運送協会
認証取得に至った経緯
リチウム電池は通信や自動車、さらには玩具等に至るまで使用が広がっており、今後はEV車の普及*やAIの進化に伴いその重要性はますます高まっていくことが予想されます。
中でも電子機器やEコマース貨物等は、リチウム電池が組み込まれた製品の航空輸送が増加しております。
リチウム電池が内蔵された製品は、航空輸送される危険物の3分の1を占めると言われる一方、申告漏れや誤申告、梱包不備などの問題が発生し、最悪の場合は火災を引き起こしているのも事実です。
そのため、当社ではリチウム電池輸送のリスクを低減し、お客様に高い安全基準と高品質な物流サービスをご提供したいと考えております。
CEIV リチウムバッテリーは、客観的な視点からリチウム電池に特化したリスクを評価したうえで、専門のトレーニングを受けたスタッフを配置し、国際基準に即した適切な取扱いの遂行が求められることから、当プログラムの実践を通じて上記の実現をめざしました。
*EV車載用リチウムバッテリーの世界市場は2030年には2019年比16倍増との予測があります

出典:経済産業省分野別投資戦略参考資料(蓄電池) https://www.meti.go.jp/press/2024/12/20241227006/20241227006-7.pdf
取得までのプロセス
当社は、成田国際空港株式会社(NAA)が立ち上げた「成田空港コミュニティ」に参画し、コミュニティでの取得を目指しました。
コミュニティでの取得は、事務手続き・取得費用の軽減などはもちろん、定期的な意見交換の場を通したリスクの共有など横のつながりを構築できたことも大きなメリットでした。

出典:成田空港株式会社HP https://www.narita-airport.jp/files/7dde0903f8d1ee4d5e8a7a82d1f912ffe630898697dcde26fd32e69094c28a82
同認証取得に向けて、当社では航空貨物本部・成田倉庫施設のメンバー(6名)でプロジェクトチームを結成しました。まずは、IATAが実施する3日間の「トレーニング」プログラムへの参加、200を超えるチェック項目を通じて、リチウム電池の輸送に関するリスクマネジメントや安全な取扱い方を学びました。
次に、「一次監査」および「認証検査」が実施されます。
IATAから委託を受けた監査員による監査・検査は計4日間にわたり、チェック項目に基づいて行われます。CEIVの基準を満たす「安全管理システム体制」「リスクアセスメント」が実装されていることの証明、且つ社内品質マネジメントシステム(QMS)に基づき「作業手順書」が作成され、それに沿った作業を適正に行い、その結果を「検証」する一連のプロセスを書面として確認・管理できる体制作りが求められます。
当社も上記基準を満たすべく、危険品・リチウム電池取扱いに特化した新たな「輸出手順書」を作成しました。
最初の1か月は毎朝1時間、その後最低週1回はチーム全員で集まり、様々ケースを想定しながら「リスクアセスメント」を行い、実際の現場作業に落とし込む作業を繰り返し行いました。
大変だったのはリチウム電池、危険品貨物に焦点を当てた品質マネジメントシステムを構築することです。チェック項目を一つ一つ社内規定や現行の取扱い手順と照らし合わせながら完成させる作業にかなりの時間を要しました。
もう一つ苦労したことは、「リスクアセスメント」を進める中で、リスクを予防するために現在の作業工程を見直す必要が出てきたことです。その際、現場の作業効率を落とさず安全な取扱いを行うよう、関係部署と何度も調整を重ねる必要があり、これも多くの時間を費やしました。
また、万が一リチウム電池が発火した場合に備えてあらゆる初期消火の方法を検討しました。当社では自動車の取扱いも多いことから、万全を期すため車両・リチウム電池火災用の消火用品を設置しました。
このような過程を経て、CEIV認証取得に至りました。
今後の展開
新たに設定した輸出手順書に基づくオペレーションを確実に実行し、現場体制をさらに強化します。
例えば、リチウムを含む危険品貨物については、貨物搬入前に詳細情報を現場へ共有し、貨物搬入時には事前情報と貨物(ラベリングなど)に相違がないかをチェックし、その結果をデータ化しております。これにより貨物搬入後、迅速かつ適切に貨物を取り扱い蔵置することが可能となります。
また、社内教育によってリチウム電池輸送に関する専門性を高め、品質管理や規則遵守を徹底致します。
これらの取組みにより、リチウム電池輸送におけるサプライチェーン全体の安全性と効率性を確保し、お客様の信頼に応えて参ります。
そして、将来的には成田空港をゲートウェイとしたリチウムバッテリーのグローバルサプライチェーン展開を実現できればと考えております。
リチウム電池輸送に関するご相談はぜひ弊社までお問合せください。